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特許
特許翻訳では、特許明細書、拒絶理由通知、意見書や答弁書などの中間書類、特許ライセンス契約、譲渡契約、無効審判書類、答弁書、特許関連裁判資料、海外代理人とのレター、優先権証明書、特許制度、法改正情報など、出願してから特許に至るフローの中で発生するさまざまな書類が存在します。また、特許と一言でいっても、多岐にわたる技術分野があります。
電気、化学、機械、医薬、ソフトウエア、ハードウエア、ビジネスモデル特許から日用品に至るまで、ほとんどすべての技術は特許の対象となり得るため、これらの技術分野について特許翻訳の必要性が生じます。
特許翻訳も技術翻訳ですが、技術翻訳とは決してイコールではありません。技術翻訳は、仕様書、マニュアル、設計書、論文など、技術開発・研究の過程で生じる技術文章の翻訳です。これに対し特許翻訳は、上述したように特許出願~特許の過程、そして特許後になされる無効審判、侵害訴訟、譲渡契約、ライセンス契約などの翻訳も含まれます。特に拒絶理由通知以降の手続については、その理解、応答作成は技術的知識だけでは対処しきれず、法律に対する知識が必要とされます。したがって、特許翻訳に求められる資質としては、技術及び法律に対する理解が挙げられます。
また、日本の会社が海外に特許を出願する際には、日本の代理人+現地の代理人を介する特有の状況があるため、その過程で代理人に対する指示書の翻訳が必要になります。これは、海外の会社が日本特許庁に出願する場合も同様であるため、ここでも翻訳が必要です。
特許翻訳者のほとんどが、特許出願の入口の部分の明細書の翻訳を行っています。しかし、拒絶理由通知、意見書などの中間書類の翻訳に対する特許事務所、企業からの需要は多く、弊社ではこれに十分対処可能です。また、裁判資料、ライセンス契約書などの翻訳もこれまで多く手がけており、短納期のニーズに対応可能です。現地代理人に対するレター、そして特許制度一般を説明する資料、PowerPointを使ったプレゼンテーション用の資料などの翻訳も数多く手がけております。
特許翻訳担当者より
弁理士資格を有し、約20年にわたり、海外に特許を出願する際の現地代理人とのレターのやりとり、特許明細書の翻訳、拒絶理由等の中間書類の翻訳をこなしてまいりました。海外の特許制度も学び、特許法の改正のアップデートされた情報をいち早く入手し、それを翻訳に反映させる努力をしております。
また、英訳については、ネイティブレベルの英語を書けるように、常日頃から、米国特許公報に目を通し、現地で用いられる単語、フレーズを頭に入れております。
技術力向上が必要なのはもちろんですが、特許で用いられる特有の英語、そして海外特許制度に精通することが特許翻訳の品質を上げる上で特に重要であると考えております。これが達成されるための海外特許情報の入手等を行いつつ、翻訳力をアップさせる努力をしています。特に対訳を見つけるときは、米国・欧州特許庁のHP,WIPO HPを駆使しております。このように特許翻訳では、ネット上でどのように検索して確認をするかという情報処理能力も重要な要素になります。(奥田)
著書
『なるほど図解特許法のしくみ』(中央経済社、2005年)
『なるほど図解商標法のしくみ』(中央経済社、2006年)
『国際特許出願マニュアル』(中央経済社、2008年)
『なるほど図解著作権法のしくみ』(中央経済社、2009年)他
過去の翻訳例
(1)特許明細書は無生物主語
特許明細書を読んでいても人間は出てきません。
“A server transmits information”, “Storage means stores received information”, “Information updating means updates information.” などのように、あくまでも手段や装置が主語になっています。ある意味、無味乾燥とした文章の連続です。
しかし、特に米国の特許明細書ではたとえば、以下のような文章があります。
”the inventors have contemplated that the claimed subject matter might also be embodied in other ways, to include different elements or combinations of elements similar to the ones described in this document, in conjunction with other present or future technologies.” (米国特許第7,600,021号)
(訳例「本発明者らは、特許請求された主題を他の態様で具現化し、異なる構成要件又は他の本技術あるいは将来の技術と併せて、本書面に記載の構成要件に類似する構成要件の組み合わせを備えることを考えた。」
このように、「発明者が~を考えた。」「発明者は~を発見した。」のように、発明者が主語として登場する文章もあります。
また、”With reference to FIG. 1, an embodiment of the present application is described in detail.” (「図1を参照して、本発明の実施態様を詳細に説明する。」)という実施例の最初に頻繁に出てくる文章があります。
これは、「説明する。」の主語が省略されていますが、出願人、発明者(そして実際には代理して明細書を記載する弁理士)が主体になっています。しかし、主語が原文にないため、訳文では受け身にしています。
(2)特許翻訳特有の用語
特許翻訳が難しいといわれるゆえんは、その技術の高度さもさることながら、特許翻訳でしか用いないような特有の用語、”therein”, “thereof”, “therefrom”, “thereafter”, “thereto”, “therefore” などを駆使するという点にあります。
“A rigid member comprises a hole, and a metal ring is embedded therein”(剛性部材には穴が設けられており、金属リングがその中に埋め込まれている。)
“A person who invents a new and useful machine satisfying the requirements may obtain a patent therefor”
(要件を充たす新規かつ有用な機械を発明した者は、その特許を受けることができる。)
“Preferably”
“The invention relates to a golf tee (10) which includes a writing point (18) and/or an eraser, preferably both”.(WO/1994/009866)
訳例)「本発明は、ゴルフティー(10)に関し、これは筆記具先端(18)及び/又は消しゴム、好適には双方を含む。」
「好適には」「好ましくは」は特許明細書で頻繁に出てくる文言です。”Preferably” や ”It is preferable that ~ ” のように訳します。
“,which~”
翻訳一般にいえることですが、特に特許翻訳では、このように前の文章全体を受けて、関係代名詞の ”which” を用いることがよくあります。
上掲の “The invention relates to a golf tee (10) which includes~” がよい例です。このようなときは、後ろから訳して、「~を含むゴルフティー(10)に関し」としてもよいし、訳例のように「本発明はゴルフティー(10)に関し、これは~」としてもよいです。
“thus enabling to ~ ”, “thus ensuring to~”
結果を表すフレーズをこのように表現することが多く、たとえば、”~,thus enabling to operate the remote controller effectively” のように、前の文章全体を受けて、「~、その結果、リモートコントローラを効率的に操作することができる。」となります。この他、”which makes it possible to operate the remote controller effectively” のように言い換えることもあります。
特許英語では明細書が丁寧に書いてあるので訳文もそれに合わせて長くなる一方で、 ”therein”, “therefrom”, “thereof”, “thus enabling to” など、なるべく簡潔に表現する工夫もなされています。弊社でもこの点に注意しながら翻訳することを心がけております。
以下に特許明細書の一例を挙げてみます。特許公表2004-518431の特許請求の範囲の一部です。「特公表」とは、特許の「国内公表」の意味であり、特許協力条約(PCT)の国際出願として外国で英語等により出願され、これが日本の特許庁の審査を受けるために日本に国内移行され、その内容を公にするために、翻訳文を公開するという制度です。以下に挙げる特許出願もこの制度によるものであり、請求の範囲、明細書は、外国で出願されたものです。具体的には、米国会社により英語で米国特許庁にされた出願であり、これが日本語に翻訳されたものです。
したがって以下の明細書は訳文であり、これに対応する原文(英語)があります。これは、WO2002/047488号という英語で米国特許庁に出されたPCTによる国際出願です
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に高解像度プリントイメージを有するチョコレート菓子であって、チョコレート基層、該基層の表面の少なくとも一部に配された全体的にほぼ白色または明るい色の食用イメージ基体コーティング、および該イメージ基体コーティングの少なくとも一部に食用黒色または着色インクの少なくとも1つを沈着させることにより形成された前記プリントイメージを有することを特徴とするチョコレート菓子。
【請求項2】
前記チョコレート基層が、ミルクチョコレートまたはダークチョコレートであることを特徴とする請求項1記載のチョコレート菓子。
【請求項3】
前記食用イメージ基体コーティングが、約0.01mmから約0.2mmの範囲の厚さを有することを特徴とする請求項1記載のチョコレート菓子。
請求項2と3は、従属項(dependent claim)といい、独立項(independent claim)である請求項1に従属するものです。請求項2は、請求項1の「チョコレート基層」がミルクチョコレート等であるというように、更に詳しく説明しています。これは「チョコレート基層」がたとえばどのようなものか限定している、ということにもなります。
請求項3は、「食用イメージ基体コーティング」の寸法(約0.01~0.2mm)を特定しています。
このように特許請求の範囲では、独立項と従属項がありますが、なぜこのように独立項と従属項を立てるかというと、独立項において「チョコレート基層がミルクチョコレートである」とか、食用イメージ基体コーティングの寸法を記載してしまと、それに限定されてしまい、第三者が少しでも異なる材質のチョコレート基層や異なる寸法の食用イメージ基体コーティングを実施すると、特許の範囲に入らず侵害とはならないからである。
したがってこのような限定が何もない独立項1を立てておき、そのなかの一つの構成要素について、それ以下の従属項で詳しく限定しています。したがって第三者がさまざまな寸法の食用イメージ基体コーティングを備えたものを実施すると、請求項1で侵害といえることになります。
特許請求の範囲の翻訳は英語の文体、構文などが非常に特殊です。
(訳例)
【請求項1】
表面に高解像度プリントイメージを有するチョコレート菓子であってチョコレート基層、該基層の表面の少なくとも一部に配された全体的にほぼ白色または明るい色の食用イメージ基体コーティング、および該イメージ基体コーティングの少なくとも一部に食用黒色または着色インクの少なくとも1つを沈着させることにより形成された前記プリントイメージを有することを特徴とするチョコレート菓子。
「表面に高解像度プリントイメージを有するチョコレート菓子であって」という部分をまず訳してしまいます。「であって」はあまり気にせず、忠実に訳そうとはしないで、
”A chocolate confectionary having a high resolution printed image on a surface”
と訳し、「チョコレート基層」以下は、更にそのチョコレート菓子が、「チョコレート基層」「食用イメージ基体コーティング」「プリントトイメージ」の3つを備えている記載されています。このようなときは ”comprising” を用い、
“comprising a chocolate base layer, entirely almost white or light-colored edible image substrate coating that is arranged on at least a part of surface of said base layer, and said printed image formed by depositing at least one of edible black or colored ink on at least a part of said image substrate coating”
のようにまとめ上げます。ここでお気づきのように、特許請求の範囲は、すべて名詞形で完結するため。 ”A chocolate confectionary comprising~” ように訳し、主語(S)+動詞(V)のような通常の訳文とは異なります。また ”comprising” のように ”-ing” 形にするのは、「有することを特徴とするチョコレート菓子」のように名詞で終わる文章の訳文だからです。
「前記」という文言で出てきます。通常の訳文であれば、 ”above-mentioned” などが訳語となりますが、特許翻訳では、 ”said” あるいは単に ”the” を用います。 ”said” は最近ではあまり好まれず、弊社でも ”the” を用いることとしています。
【請求項2】
前記チョコレート基層が、ミルクチョコレートまたはダークチョコレートであることを特徴とする請求項1記載のチョコレート菓子。
“The chocolate confectionary according to Claim 1, wherein the chocolate base layer is milk chocolate or dark chocolate”
“wherein” という特許翻訳特有の単語が出てきました。これは主に特許請求の範囲で使われ、前に述べた要素を更に詳しく説明するとき、 ”wherein” でくくり、その中に特徴を記載していきます。 ”in which” とは完全に同一ではありませんが、それに近いイメージの単語です。 ”in which” の場合は先行詞を必要としますが、 ”wherein” は先行詞は必要とせず、 ”wherein” のくくりの中で、既に請求項1に出てきた ”chocolate base layer” につき、 ”wherein the chocolate base layer is~” のように更に詳しく記載していきます。
【請求項3】
前記食用イメージ基体コーティングが、約0.01mmから約0.2mmの範囲の厚さを有することを特徴とする請求項1記載のチョコレート菓子。
“The chocolate confectionary according to Claim 1, wherein the edible image substrate coating has a thickness of about 0.01 mm to about 0.2 mm”.