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金融
近年の金融分野での翻訳は、80年代から急速に拡大した、スワップやオプションなどの金融派生商品(デリバティブズ)、匿名組合を利用した航空機リースのファンド化、不動産を中心として金融証券化、さらに、オルタナティブ投資と呼ばれる、リミテッドパートナーシップを利用したプライベートエクイティやヘッジファンドなど、様々な新金融商品が中心になってきています。
さらに、企業経営やM&Aにおいて中核的な、コーポレートガバナンス、アントレプレナーシップ、コンプライアンスやアカウンタビリティなど通常カタカナ表記される概念が頻繁に使用されています。
これらの金融商品は、外資系金融機関や日系金融機関の国際畑の専門家によって扱われ、普及してきたという背景があります。このようなカタカナ表記の専門用語においては、特定の日本語訳、例えば、コーポレートガバナンスのように日経新聞が「企業統治」という絶妙な訳語を付け、一般的にも使われるようになっていたにもかかわらず、ガバナンスは「民主的合意方式」とも訳されるように、「統治」という日本語訳ではガバナンスの意味を十分に包含していないといったケースが多々あります。このあたりは、医学専門用語のように、日本の医学学会が中心となって訳語を統一したような分野との大きな違いです。
契約書や目論見書等においても、古典的金融商品である上場株式や債券、融資や預金、さらに投資信託における日本語は、銀行協会、証券業協会を中心にして統一化されてきましたが、上記の新金融商品に関しては、各金融機関や運用会社が独自のものを使用することが多く、さらに、デラウェアやケイマンなどの、いわゆるタックスヘイブンにファンドを設定することが前提となっており、複数の国の法律と税制を理解しておく必要があります。
当社では、外資系金融機関の最前線で上記のような新金融商品を長年扱ってきた経験豊富なスタッフが、そのままカタカナ表記したり機械的に訳語を与えたりするのではなく、その商品の運用会社や投資家が準拠する法律、税制、規制などの背景を十分に考慮し、適宜訳語を使い分けて翻訳を行います。
金融翻訳担当者より
30年間勤務した外資系の金融機関において、デリバティブ商品やオルタナティブ投資に携わり、欧米各国の一流の金融機関や運用会社を相手に仕事をしてきた現場経験を生かし、「生きた」翻訳を、短時間で翻訳・納品させていただくことを心がけております。翻訳は英語が中心ですが、仏系の金融機関で長年働き、フランス語のコーポレートガバナンスに関わる経済書を翻訳・出版した経験もあり、フランス語の翻訳も手掛けております。(山田)
「世界を壊す金融資本主義」
NTT出版(2007/03)
ジャン ペイルルヴァッド(著),山田 雅俊(監修),Jean Peyrelevade(原著),林 昌宏(翻訳),宇野 彰洋
過去の翻訳例
- 「世界を壊す金融資本主義」(NTT出版、2007 山田)(フランス語→日本語)
- 各種PPM(プライベートプレースメント目論見書)、各種LPA(リミテッドパートナーシップ契約書)の翻訳(英語→日本語)
- 各種Offering Memorandum(募集要項)、DD(デューディリジェンス)報告書、
MOU(覚書)の翻訳(英語→日本語、日本語→英語) - 各種ヘッジファンド、プライベートエクイティファンドのTrack Record(実績)報告書の翻訳(英語→日本語)
- 各種投資事業組合、匿名組合、不動産証券化に関わる、契約書、覚書、実績報告書等の翻訳(日本語→英語)
- 英米の大手ファンド運用会社のCorporate Brochure(会社案内)、Annual Report(年次報告書)の翻訳(英語→日本語)
- 企業アントレプレナーシップに関するレビュー論文の翻訳(英語→日本語)
Although investor principal will be repaid after the fifth year, the investor will retain partnership interest.
一般的な翻訳
投資家元本は5年後に返済されるが、投資家はパートナーシップ金利を保有し続ける。
問題点
英文の「will be repaid」という受動態をそのまま「返済される」と直訳していますが、ファンド運用会社(General Partner)が主語として隠されているので、能動態にした方が自然です。
さらに、PPMやLPAの中での「interest」は、利息や金利という意味ではなく、「パートナーシップ持分の所有権」の意味であるので、専門家用の翻訳であれば、そのまま「インタレスト」、より一般的な翻訳であれば、「持分所有権」など訳す方が正しいでしょう。但し、同じ契約書や目論見書の中でも、レバレッジをかけるための融資や債券に関わる「interest」が使用されている場合には、所有権ではなく「金利」と訳します。
わかりやすい翻訳
投資元本は5年後に償還するが、投資家はパートナーシップ持分所有権を保有し続ける。
債券アービトラージ戦略型ヘッジファンドインデックスは、日本国債の反騰と強固なテクニカル要因によって0.5%上昇し、年初来最大のパフォーマンスを示した。
一般的な翻訳
Bond arbitrage strategy hedge fund index moved up by 0.5% by a rally of Japanese Government bonds market and a technically strong factor and showed the highest performance since the beginning of the year.
問題点
日本国債は、通常JGBが使われる。「by a technical strong factor」は直訳なので、「due to a technical rebound」など、より意味が明確になる訳の方が好まれます。さらに、「showed the highest performance」も、一般的に日本語の文章では「パフォーマンス」などの日本語化したカタカナ用語を必要以上に多用する傾向があり、英文としては逆に不自然になるので、「had the highest return」などのように、よりシンプルで自然な表現の英語に訳す必要があります。
わかりやすい翻訳
Bond arbitrage strategy hedge fund index moved up by 0.5% due to a rally of JGB market and a technical rebound and had the highest return for the year.
2009年10月のReuterの記事(一部原文を修正)の翻訳例
一般的な翻訳
The catast r ophe bond market is emerging from the global financial crisis and lift ing the barrier between two financial fields such as casualty insurance and investment banking , as investor demand revives and spreads t i ghten.
カタストロフィー債市場は世界的な金融危機から出現し、投資家の需要が回復し、スプレッドがきつくなるに従って、損害保険と投資銀行という2つの金融領域の障壁を上げている。
問題点
まず、英文の「lift the barrier」を「障壁を上げる」と訳していますが、この場合の「lift」は正反対の、障壁を「取り除く」とか「撤廃する」という意味です。「emerging from」、「出現」と訳していますが、金融商品がひとりで現れてくるわけでなく、金融機関の人間が作り出すものなので、「生み出された」という受動態にした方が自然でしょう。さらに、「spreads tighten」を、「スプレッドがきつくなる」と訳していますが、スプレッドは通常、広がる(拡大する)、狭まる(縮小する)とういう表現を使い、きつくなる(締まる)、緩くなるなどという文字通りの訳は使いません。
わかりやすい翻訳
カタストロフィー債市場は世界的な金融危機の際に生み出され、投資家の需要が回復し、スプレッドが縮小するに従って、損害保険と投資銀行という2つの金融領域の障壁を取り除いてきています。