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コンピュータ
コンピュータ分野はますます進化の一途をたどっています。
つい先日のことですが、Oxford English Dictionaryの出版元、英Oxford University Press社は、オンライン利用者の増加により、次版の紙の発行は今後行わないことを発表しました。(注1)同社では、この20巻の大辞典をインターネットで利用する人数が増加し、紙による印刷物の人気がなくなったことから第三版以降は電子版のみを発行するとしています。オックスフォード大辞典のサイト(注2)では、30日間の無料お試し期間を除き年間240ポンドの購読料で辞書を利用できます。年間購読者からのヒットは月に200万もあるそうです。
チーフ・エクゼクティブのポートウッド氏によれば、
“Mr Portwood said printed dictionaries had a shelf life of about another 30 years, with the pace of change increased by the popularity of e-books and devices such as the Apple iPad and Amazon’s Kindle.”
「紙の辞書はあと30年もすれば本棚から消えてなくなる。AppleのiPadやAmazonのKindleなどの端末が登場し、電子書籍の人気によって変化が加速している。」
確かに重い辞書をわざわざ本棚から引っ張り出して調べ物をするよりも、ネットで検索するほうが手っ取り早い。出版側でも印刷や流通コストを押さえられ、従来よりも低価格で商品を提供できるメリットがあるでしょう。
日本でも電子書籍(electronic book)の市場規模は、上記のような専用端末の登場や国内のデジタルコンテンツの流通が整備された結果、2014年には携帯上の電子コミック市場を凌ぐ1300億に拡大するとも言われています(注3)。内外のさまざまなメディアがネット上で電子化され、どのように流通・販売されるようになるのか目が離せないところです。
弊社では、コンピュータ分野といっても一般的なPCのソフトウェア、ハードウェアにとどまらず、汎用機、IT、ワイヤレス、ネットワーク、セキュリティ、コンピュータサイエンス、ローカライゼーション、システム開発など大変多岐にわたる分野の内容を扱っています。また今日ではテレビや携帯電話などの情報家電、炊飯器、冷蔵庫、洗濯機などのデジタル家電、各種の計測機器、乗用車、工作機械、精密機械、医療機器など、あらゆる装置にコンピュータが使われているため、それらの製品に関するニュースレター、開発マニュアル、ユーザーマニュアル、ウェブサイト翻訳、仕様書、技術論文などの翻訳を行っています。技術的な難易度も対象となる読者もその都度異なりますが、お客様のニーズに合った丁寧な翻訳を心掛けています。
特にコンピュータ分野では製品の開発サイクルが短く、アップグレードも頻繁に行われることから、開発段階で英単語の訳語が決定していないことがあります。また、訳語のニュアンスが固くなる場合、漢字や平仮名が使われずにカタカナ表記のまま市場に出回って定着してしまうこともあります。例えばdenominationという単語はオンラインカジノで使われるソフトウェアでは、ゲームに使用するコインサイズを意味し、デノミと訳します。賭けることを意味する単語「bet」も「ベット」というカタカナで表記されます。新しい用語は辞書にもまだ載っていないことが多く、単語の持つ性質も分野によって若干違ってくる場合があるので(デノミといえば金融の分野なら通貨単位を変更することを思い浮かべるかもしれません)、時間の許す限りインターネットや雑誌などでその分野に関する背景知識や技術的な内容を頭に入れるようにしています。お客様からの辞書や用語の指定がない場合は、お客様と相談して適切な訳語を決定する作業を行い、読み手を意識したわかりやすい丁寧な翻訳を心掛けています。また、コンピュータ分野に限ったことではありませんが、日本語のダジャレやジョークが英語に訳しにくいのと同じにように、英語でも韻を踏んだフレーズやジョークを含んだ文章は訳すのに非常に苦労します。例えば、「World Wide Whoops」という雑誌の見出しがあります。記事の内容は、WWWの構築者であるティム・バーナード=リー氏に関するもので、見出しをWorld Wide Webにひっかけています。記事中にも「slashing the slashes」という語句がでてきます。これを「スラッシュをスラッシュする」と書かずに単に「なくす」と訳してしまうと原文の韻を踏むリズムが消えてしまいます。このような場合には、お客様にこのような原文の面白さをしっかり伝えたいため訳注やメモを付けるようにしています。
(注1)
簡略版はこれまで通り書店で販売される。
http://www.telegraph.co.uk/culture/books/booknews/7970391/Oxford-English-Dictionary-will-not-be-printed-again.html
(注2)
http://www.oed.com/
(注3)
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100707_379065.html
コンピュータ担当翻訳者より
コンピュータの分野においても、背景知識と翻訳技術に基づいた「読みやすい訳文」を基本とし、意味の分かりやすいユーザーフレンドリーな翻訳を目指しています。マニュアルの翻訳にありがちな「翻訳調の分かりづらい訳文」ではなく、「最初からその言語で書かれたように思わせる訳文」を目標に掲げて作業を進めています。
翻訳文を超えた「日本版」「英語版」の作成もおこない、本来の意味でのローカライズをご提供します。
最近では、変化の激しいSEO関係の翻訳も手掛けています。(竹中)
クライアントからのご指定に合わせ、表記方法や訳語を変えながら作業を進めています。
改訂の早いマニュアルなどでは、翻訳メモリを利用して表現の統一を図っていますが、それに頼りすぎることなく、過去の訳文よりも分かりやすい表現がある場合は、新たな訳文を作り、メモを添えて提出するようにしています。(森岡)
過去の翻訳例
- 自動車故障診断システム(英日翻訳、Translation Manager使用)
- オフィスコンピュータのユーザーマニュアル(英日翻訳、Translation Manager使用)
- ファイヤーウォールに関するソフトウェアユーザーマニュアル(英日翻訳、Trados使用)
- ソフトウェア開発のフォローアップレビュー文書(英日翻訳)
- SEO対策に関するニュースレター(英日翻訳)
OSに関する雑誌記事
原文
The OS is less piggish: The initial version of Windows Vista had a signature feature (the splashy Aero environment)that was too much of a resource hog to run well on many early-2007 PCs. So far, all signs point to Win 7’s being sprightly enough to perform decently on all current systems, even netbooks.
翻訳例
OSがより「少食」に:Windows Vistaの初期バージョンにはシグニチャ機能(派手なAero環境)があり、これが非常にリソースを消費したため2007年前半までのPC上ではうまく動作しなかった。今のところWin7は、ネットブックを含む現行のすべてのシステムで適切に元気よく動作している。
注記
piggish→「豚のような、強情な、強欲な、不潔な」ですが、resource hogの「hog」の意味を強く出すためにpiggishを使っていると思われます。文脈としてはOSがメモリを豚みたいにガツガツ消費しなくなったことを意味しているので、ここでは「軽く、または少食」くらいの訳でいいと思います。all signs point to→~の兆候がみえる、~のようだ、と自然に訳します。
ネットワークに関する雑誌記事
原文
But while Berners-Lee may be fond of some of the latest developments to impact the Web, there’s one he’s not fully sold on yet: cloud computing. While he agreed that there is an inevitable drive to have more Web-based applications, he added that the idea can’t be readily applied to all uses.
翻訳例
バーナー・リー氏はウェブに影響するような最新の開発分野を好意的に受け止めているのかもしれないが、ひとつ完全にはまだ納得していない分野がある。それはクラウドコンピューティングだ。ウェブをベースとするアプリケーションに移行せざるをえないことはリー氏も認めているが、そのような考え方はすべてのユーザーには簡単に当てはまらないと付け加えている。
注記
sell on→ 価値を説得する、納得させる、inevitable drive→避けられない動き→移行せざるをえない、滑らかな日本語になるように訳します。cloud computing→クラウドコンピューティングのこと。従来はパッケージで購入したワープロや表計算などのアプリケーションソフトを自分のパソコンにインストールして利用していたが、これをすべてインターネットに接続して利用する仕組みです。(Yahoo!新語辞書より)
ネットワークに関する雑誌記事
原文
“One of the gating factors of Web apps taking off is trust. How do we determine, when software is taking data from here, here, and here, that we can trust it? There are cross-scripting threats and a lot more design that needs to be done.” Still, his idea can’t be ruled out entirely, he added.
翻訳例
「ウェブベースのアプリケーションが離陸するには信頼性という搭乗ゲートをまず通らなければいけない。ソフトウェアがデータをここからも、ここからも、ここからも取ってきた場合、データの信頼性をどうやって決めるのか?クロスサイトスクリプティングの危険性があるし、設計しなければならないことがまだまだたくさんある。」まだ同氏の意見は完全には無視できないはずだ。と付け加えている。
注記
gating factors→搭乗ゲートとなる要素、原文にある飛行機に乗るときのニュアンスを上手に引き出せるように堅苦しくならないように訳します。cross-scriptingクロスサイトスクリプティングのことだと思います。言葉を適宜補って訳します。rule out→除外する、度外視する、考慮から外す→無視する、と滑らかに訳します。
SEOに関するニュースレター
原文
The days of low cost traffic via AdCenter and Yahoo! Search Marketing may be nearing an end (unless market share slips so far that they become largely irrelevant, but that seem unlikely, at least in the short term).
翻訳例
Yahoo!サーチマーケティングを介した低コストトラフィックの時代は、マーケットシェアが下がっておよそ重要ではなくなるというわけではないが(少なくとも短期的にはそんなことはありえない)、終わろうとしているのかもしれない。
注記
Unlessは「・・・でない場合に限って・・・という状況を除いて」でmarket~irrelevant,までが前の文章にかかっています。また前後の文章関係の文脈から意味的には譲歩を含んでいるので、「~というわけではないが」と自然な流れにします。so far thatはこの場合so thatに意味が近いのではないかと思います。
SEOに関するニュースレター
原文
Google’s still a ways out in front in terms of catching and discounting manipulative practices, but Yahoo! has been a close second for some time.
翻訳例
Googleが今のところ操作的な悪質な手口を発見して検索対象から外すといった手段を取っている点で先を行っている。しかしYahoo!もGoogleに僅差の2番手として攻撃を受けてきている。
注記
discountは一般的には「割引する、軽視する」などの意味がありますが、この場合文脈からするとGoogleが検索対象となるサイトを評価から除く、つまり「リンクの対象から外す、検索対象から外す」という意味を含んでいます。way(s)→道のり、長い距離、in front→前に、先に、とします。