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2021/06/24

ことばの力、その4(日本語を英語に翻訳するコツ)

心理学訳担当の内野です。

英語と日本語には文章構成に大きな違いがあるため、多くの場合直訳すると意味が通りません。今日のコラムでは簡単な文を使いながら、日本語を英語に翻訳する際のちょっとしたコツをご紹介致します。

日 本語の文章では主語や目的語を省くことが多いですね。省かれていても話している内容から主語や目的語は推測できます。例えば「来週の日曜、奥さんに娘さん の誕生日会に行くってちゃんと言っておいてね、って言ったの。」という文章を使って考えてみましょう。日本語ではこの文章の前に何を話していたのかがわか れば、細かい内容は推測できます。英語にこの文を翻訳するとどうなるでしょうか?

1.直訳 (Literal translation)

英 語に直訳すると[Someone] told [someone] to tell [someone’s] wife that [someone] was going to [someone’s] daughter’s birthday party next Sunday.となり、誰が誰の娘の誕生日会に行き、そのことを誰に言ったのかが分からず、意味が通じません。

英語はWho, what, when, where, why, howつまり「誰が、何を、いつ、どこで、何のために、どうやって」を明確にした論理的な文章を好みます。そのため、日本語を英語に翻訳する際、単語を補う必要が出てきます。

2.あやふやな単語を明確にする

原文を見ただけでは「来週の日曜」が「誕生日会のある日」なのか「私がボブに話した日」なのかははっきりしません。ただ、少し考えてみると「私がボブに話し た日」は過去の出来事ですね。そのため「来週の日曜」は「誕生日会のある日」を指している事が分かります。もし「来週の」という部分がなく「日曜」だけが 原文にあれば文脈(context)から「日曜」が「誕生日会のある日」なのか「私がボブに話した日」なのかを推測する必要が出てきます。

ここまでのステップで、文の内容が分かりましたね。日本語で詳細に表すと「私は私の友だちのボブに彼らの娘さんの来週の日曜に開催される誕生日会に私が行くということを奥さんに伝えておいてと言った」となります。

3.短い文に区切る

また、日本語では一文が長くなる傾向がありますが、英語では短く簡潔な(succinct)文が好まれます。そのため、日本語の原文をいくつかの文に分解して訳すことが多いです。

一 文のままで訳すとこうなります。“I told my friend Bob to tell his wife that I was planning to come to their daughter’s birthday party that occurs on the following Sunday.”少し長いですね。それでは二文に区切ってみましょう。

”I told my friend Bob to tell his wife about my plan. I am planning to come to their daughter’s birthday party that occurs on the following Sunday.”

これが「来週の日曜、奥さんに娘さんの誕生日会に行くってちゃんと言っておいてね、って言ったの。」の英語の訳となります。

4.文の順番、つながりを考慮する

今回は一文を例に使ったためこのステップは当てはまりませんが、ここでこのステップもご紹介しておきます。長い文章を訳す時には一文一文の順番、文どうしの つながりなどを考える必要があります。時には文の順番を入れ替えたり接続詞を加えることで全体が論理的に流れるようにすることもあります。
翻訳に慣れてくると「筆者の言いたいことを自然に英語で表現するとどうなるか」を念頭に置き、英語で考えるようになります。そうすると後のほうのステップにより力点を置き、最終的な文章が英語で論理的に伝わるように翻訳できるようになってきます。

では次回のコラムをお楽しみに!