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2014/12/25

気候サミットに寄せて:A Thought on the Climate Summit

環境翻訳担当のYMです。

9月23日にニューヨークの国連本部で開かれた気候サミット(UN Climate Summit)は、これまでの地球温暖化(global warming)に関する一連の国際会議と比較して非常に具体的であったことが高く評価されています。

中でも、これまで温室効果ガス(greenhouse gass: GHG)の発生に寄与してきた国際企業が各国政府や非営利団体とともに排出削減(emission reduction)への取組みに署名したことは、何かが変わるかもしれないという希望を抱かせる成果と言えます。例えば:

森林に関するニューヨーク宣言(New York Declaration on Forests)
2030年までに世界の自然林(natural forests)伐採率を現在の半分にすることを宣言。28か国の政府、35の民間企業、16の先住民族団体、45の非営利・市民団体等、150以上の機関・団体が参加する。
画期的な点は、これまで原生林伐採の元凶となってきたパーム油関連企業(Wilmar、Golden Agri-Resources、Cargillなど)や牛肉関連企業(McDonald)、製紙関連企業(Asia Pulp and Paper)が署名したことにあると言えます。

* その他、アイスクリームのBen & Jerry’s、石鹸の Dove、紅茶のLipton、マヨネーズの Hellmann’sを所有するUnilever、世界最大のスーパーマーケットチェーンWalmart、ヨーグルトなどの乳製品で有名なDanone、朝食シリアルの定番Kellogg’sやGeneral Millsなども参加。同宣言に署名した機関・団体の一覧についてはhttps://www.forestcarbonpartnership.org/sites/fcp/files/
2014/september/ForestsDeclarationEndorsers.pdf
参照。

アフリカにおけるクリーンエネルギー回廊(African Clean Energy Corridor)
国際再生可能エネルギー機関(International Renewable Energy Agency: IRENA)の提案により、エジプトから南アフリカ共和国を結ぶ8,000kmにわたって再生可能エネルギー・ネットワークの構築を行う。19か国と32の政府機関や地方団体、開発組織、民間投資家が参加。

その一方で、方向性が危惧されるものもあります:

グローバル農業連合(Global Alliance for Climate-Smart Agriculture)
2030年までに全世界で5億人の農民が気候変動対応型農業(Climate-Smart Agricature: CSA)を実践できるよう支援。16か国、37団体が参加。この中には主な肥料(fertilizer)産業協会も含まれている。

言葉の響きはよいが、さて気候変動対応型農業とは?という疑問がすでに出ていることも事実。これは巨大アグリビジネス(agribusiness)や肥料産業が非常に積極的に介入していることから、工業型農業(industrial agriculture)や、効果および測定基準が明確でない、土壌を利用したカーボンオフセット(soil carbon offsetting)を通じて、各地域環境に適した農業の模索ではなく、コミュニティや環境を破壊するグリーンウォッシング(greenwashing)が行われる可能性があるからです。

国際企業・機関が動かなければ気候変動への取組みが進まないことは確かです。しかし利益追求型の大手企業が本質的な環境保全を行うかどうか、市民一人ひとりが監視していくことの重要性も浮き彫りになったのではないでしょうか。

今年12月には京都議定書(Kyoto Protocol)にかわる枠組みの草案をまとめるため、ペルーのリマで国連気候変動枠組条約第20回締約国会議(COP20)が、また2015年末には新たな枠組みへの合意を目指すCOP21が開かれます。これからしばらくは、各地で開かれる新枠組みに向けた動きから目が離せません。