翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2013/01/11
イカについている寄生虫

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

地球上で生活している生物はすべて、食う・食われるの関係である食物連鎖、相互または片方が利益を得ながら共に生きる共生など、直接あるいは間接的に、何らかの関わり合いをもちながら生きています。寄生もそのような生物間の関係の一つで、寄生虫はほかの生物から住み家と食料をもらって生活しています。

寄生虫というとみな悪者のように思えますが、寄生虫は本来宿主には害を及ぼしません。なぜなら宿主が死んでしまうと自分も生きていけないからです。しかし、なかにはマラリア原虫のように、寄宿主に致命的な害を及ぼすものもあります。

イカの寄生虫でよく知られているのが、アニサキス類(Anisakis)です。アニサキス類は白い糸状の線虫ですが、シストという半透明の粘膜の中で丸まっていることがあります。成虫は、イルカやクジラなど海のほ乳類の胃に寄生しています。このように成虫が寄生して生殖を行う宿主を、終宿主(final host)といいます。

終宿主の排泄物に混ざって体外に出たアニサキスの卵は、海水中でふ化後に1回脱皮して第二期幼虫にまで発育し、オキアミ(krill)に食べられて第三期から第四期幼虫の時期を過ごします。オキアミのように幼虫の時期だけの宿主を中間宿主といいます。中間宿主がほかの生物に食べられると、食べた生物の体内に寄生して、終宿主に食べられるのを待つものもいます。オキアミを食べるイカやタラのような宿主は、待機宿主とよばれます。

本来の宿主ではないヒトが、間違ってアニサキスを食べてしまっても、ヒトでは成虫になれずに消化されてしまいます。しかし、胃や腸に突き刺さって激しい腹痛やおう吐を引き起こすこともありますので、イカなどを生食するときには注意が必要です。

アニサキスのほかにも、生のイカによく見られる寄生虫があります。見た目はご飯粒のようにも見えますが、サナダムシの仲間でニベリン条虫の幼虫です。こちらはサメ類を終宿主とし、オキアミ、スルメイカ、スケトウダラなどを中間宿主としています。食べてもヒトには寄生しませんが、口や胃の中に吻を突き刺してくっつき、強い異物感や下痢を引き起こしたという症例もあります。

ニベリン条虫の幼虫は4本の吻をもっていますが、吻はバラのとげのような形をしており、幼虫は宿主の肝臓などの表面に、吻を引っかけてしがみついています。

ニベリン条虫の幼虫は、吻を出したり引っ込めたり、からだは奇妙な動きをしたりするので、見つけたらルーペなどで観察してみると面白いでしょう。


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