翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2013/01/10
コンニャクは食べても太らない?

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

コンニャク[a gelatinous food made from devil's-tongue starch]はサトイモ科の植物であるコンニャクイモの地下にできる球状の茎からつくられます。生のコンニャクイモは、かけらを口にしただけでも舌がピリピリし、とても食べられたものではありません。これはコンニャクイモに含まれているシュウ酸(oxalic acid)などの毒性を示す酸性物質が舌を刺激するからです。

不思議なことに、酸性をアルカリ性で中和するとコンニャクイモの成分が固まり、食べられるようになります。昔は植物を燃やしたあとの灰を中和剤(neutralizer)として使っていましたが、現在では水酸化カルシウムなどの薬品を使っています。

コンニャクでは100グラム中に含まれる成分のうち、最も多いのが水分で97グラム、続いて食物繊維が約3グラムになります。ですから、コンニャクは水を除くとほとんどが食物繊維ということになります。

ちなみにヒジキなどの海藻を加えた黒いこんにゃくも売られていますが、これはコンニャクイモの皮を除かずにつくられていた時代のコンニャクのイメージを保つためということです。最近は抹茶や柚子などさまざまなものを混ぜ込んだコンニャクが続々と登場しています。

人間が食べたものは体内で胃液などの消化液と混ぜあわさります。このとき活躍するのが消化酵素です。消化酵素は仕事を分担していて、細胞内の翻訳会社となるリボソームで合成されたタンパク質だけを分解するもの、脂肪だけを分解するもの、炭水化物だけを分解するものというように、作用する物質が決まっています。このような消化酵素の性質を基質特異性といいます。

コンニャクに含まれている食物繊維のグルコマンナンは、グルコースとマンノースという糖がたくさんつながってできている炭水化物です。しかし、ヒトはグルコマンナンを分解する基質特異性をもった消化酵素をもっていません。分解できないから吸収することもできないため、炭水化物でありながらカロリーがないということになります。

なぜゼロではなく、「ほぼゼロ」というあいまいな表現なのでしょうか。それは、小腸の下部や大腸に生息している腸内細菌がこの消化酵素をもっているからなのです。コンニャクの食物繊維は腸内細菌によって分解され、それをヒトが間接的に吸収しているため、吸収したカロリーが正確にわからないからなのです。

コンニャクには低エネルギーにもとづく肥満防止以外にも、コレステロール値を下げたり、血液中の中性脂肪を減らすなどの効果があります。


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