翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2012/04/23
固体酸化物型燃料電池の進歩

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

アメリカの電力事情は早急な燃料電池の実用化を必要としており、エネルギー省は国立エネルギー技術研究所(National Energy Technology Laboratory)と共同で分散型燃料電池の実用化を目指して、SECA(Solid State Energy Conversion Alliance)を展開しています。この目標の一つが、シーメンス・ウエスチングハウス(Siemens-Westinghouse)社製の固体酸化物型燃料電池(SOFC)の早期実用化であり、積極的に政府関連の建物への取り組みを行っています。250kWをベースとし、高温の排気ガスでタービンを駆動することで、320kWまで出力を高め、これらを何機かまとめることにより、1メガワットクラスの要望に応えられるようにしています。

一方、小型の固体酸化物型燃料電池の分野ではカナダのグローバル・サーモエレクトニック(Global Thermoelectric)社が、固体酸化物型燃料電池の弱点の一つである高い運動温度を下げることに成功しました。このタイプでは運転温度の低下が課題だったからです。同社は熱電素子およびそれを用いた発電機器と暖房機器のメーカーですが、固体酸化物型燃料電池に取り組んですぐに性能の改善を実現させました。出力密度の点でも固体高分子型燃料電池にひけを取らないレベルに達しています。

同社の技術のポイントは、アノードに付着した10ミクロン程度の非常に薄い電解質にあるようです。とくに700℃での性能と運転温度の低下で可能になった普通のステンレスセパレーターは、その使用がコスト削減に貢献します。

また、同社は高温での熱サイクルにも弾性を失わないガスケットを開発し、振動とヒートショックに強いシステムを構築しました。この技術は自動車部品大手のデルファイ(Delphi)社の着目するところとなり、BMWとの共同でこのタイプの燃料電池を使用した大型車用補機電源が開発されました。大型車は荷物の積み替えなどで長時間の停車中にも補機を動かす必要があり、そのためにエンジンをアイドリングしなければなりません。このときの騒音や排出ガスと経済性を考慮した補機電源の開発です。

また、カナダの天然ガス最大手のエンブリッジ(Enbridge)社もこの技術に着目することになりました。燃料改質が不要な点、廃熱の温度が高く給湯などのコジェネ的利用でメリットが期待できるため、家庭用電源市場での固体高分子型燃料電池に対する強力な競争相手になるといえるでしょう。


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