翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



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2012/02/22
アルツハイマーと痴呆

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

「痴呆」ということ言葉を聞いたことがあるでしょう。しかし、その言葉の指すところの意味の問題から、現在では医学的にはこの言葉は使われておらず、「認知症」といいます。また、「アルツハイマー」という言葉も最近よく耳にしますが、これは病名ではなく、認知症の種類で、発見者の名前「Alois Alzheimer」にちなんで名付けられました。

認知症にはアルツハイマー型認知症のほかに脳血管性認知症などがあります。認知症のなかでも特に多いのがこの2つのタイプで、その混合型も合わせると認知症全体の8割以上になることから、アルツハイマーという言葉がひとり歩きしたと考えられます。

認知症と間違えられやすい症状に、うつ病や老化による物忘れなどがあります。老化による物忘れは認知症と根本的に異なります。物忘れが病気ではないからです。また、物忘れの進行は半年〜1年では大きな変化がなく、加齢とともに徐々に進みますが、認知症は若い人でも発症し、多くが短期間で急激に症状がひどくなるとされています。

認知症の日本での治療には、アルツハイマー型認知症に限っては「ドネペジル(商品名:アリセプト)」という薬による薬物治療が有効とされています。しかし、この薬がすべての患者に効くとは限りません。また、病気そのものを治す薬ではなく、進行を遅らせるための薬なので、治療薬の開発が求められています。

これまでの研究から、認知症になりやすい危険因子と、その逆で、認知症になりにくい保護因子について報告がなされています。これを参考にすると、年齢や遺伝など、私たちの意志でどうにもできないことを除き、認知症予防ができます。たとえば、危険因子としては、高血圧や脂質異常症(dyslipidemia)、糖尿病、肥満、喫煙、保護因子としては、1週間に3回以上の運動、少量の飲酒、魚や葉酸(folic acid)の摂取などがその例です。


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