翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2012/02/16
再生医療の可能性

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

人間の手足や臓器は、トカゲのしっぽやカニのハサミと違って、事故やけが、病気などで欠損してしまった場合、再び生えてくることはありません。移植には免疫拒絶反応(immune rejection)の問題もあるので、自分自身の細胞を活用して組織を再生しようというのが再生医療です。

やけどなどで皮膚を損傷してしまった場合、無傷で残った自分の表皮を一部採取して組織培養を行い、増殖させて再び本人に移植する方法があります。一部の皮膚組織から約3週間で、その1000倍を超える培養表皮の作製が可能です。数週間で人体に生着し、元のように新陳代謝しますが、毛穴や汗腺(sweat gland)までは再生できないという問題が残っています。

大けがをして、その部分がくぼんでしまったことがありませんか。けがをするとその周辺の細胞は、元の状態に戻ろうと増殖しますが、肉がえぐれてしまったときには元通りにはなりません。血液細胞以外のほとんどの細胞は、生体内では細胞外マトリックスとよばれる増殖や分化のための足場材料に接着して存在していますが、生体組織が大きく欠損した場合にはこの足場も失われるため、欠損した部分に細胞を補うだけでは再生は望めません。そこで再生させたい部分に細胞の増殖、分化の仮の足場が必要となります。足場にはゼリー状の生分解性高分子が用いられます。これに自分の細胞を分散させ、その中で細胞を増殖していくと、次第にゼリーはからだに吸収され、細胞が元通りに再生するのです。

再生医療では化学や生物学、材料工学など、医薬や医学というジャンルを超えてあらゆる分野の技術をどんどん応用して、従来の外科的な処置では不可能であった治療を次々と可能にしてきました。ES細胞やiPS細胞などとともに今後の発展が期待されます。


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