翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



分子生物学・バイオ技術・環境コラム

分子生物学・バイオ技術・環境コラム一覧へ戻る

2012/02/09
キシリトールについて

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

CMなどでよく耳にするようになった「キシリトール(xylitol)」。特にガムや歯磨き粉に入れられ、虫歯予防作用をうたった製品が目につきます。キシリトールは野菜や果物に含まれており、特にイチゴやほうれん草などに多く含まれています。日本では1997年に食品添加物として認可された甘味料(sweetener)です。また、水に溶けるときに周りの熱を奪う性質があり、口の中に冷涼感を与えるので、タブレット型のお菓子にも使われています。変わったところでは、医薬品として糖尿病患者の栄養補給用として使われるなど、幅広い用途をもっています。シラカバ(white birch)やブナなどの広葉樹から得られるキシラン(xylan)というものを原料としてつくられています。

最も関心がもたれるのは、虫歯を予防する効果があるといわれている点でしょう。虫歯の原因は虫歯菌が、食べ物に含まれる糖類やデンプン(starch)をエサとして利用した際に生成される酸が、歯のエナメル質(tooth enamel)を溶かしてしまうことにあります。そこで、虫歯菌のすみかである歯垢をはみがきにより取り除くわけですが、残念ながらいくら頑張っても25%程度は残ってしまうため、虫歯菌を完全に取り除くことは不可能です。そして、残った虫歯菌はすぐに増殖してしまいます。

虫歯菌はキシリトールを取り込みますが、エサとして利用することができず、結局そのまま排泄してしまいます。その際に、多くのエネルギーを消費し栄養不良状態となり、増殖速度が低下すると考えられています。ある程度以下の虫歯菌の密度であれば、虫歯にならないことがわかっており、キシリトールの利用で実現可能といわれています。フィンランドの研究者によると、11〜12歳の子どもに毎日10グラム程度のキシリトールをガム5粒に分けて摂取すると、摂取しなかった子どもに比べて虫歯菌の密度が、1年後に半分、2年後に3分の1以下になったことが報告されています。しかし、キシリトールだけでは効果がなく、はみがきをきっちりおこない、フッ素(fluorine)による歯の強化などとともに利用することにより、はじめて効果が発揮されることも報告されています。

具体的には、毎日欠かさず、毎食後に歯を磨いた後と寝る前に、他の糖類を含んでいないキシリトール入りのガムをゆっくり噛むことを続けなければなりません。まるでタバコを吸うように習慣づけることが必要です。また、虫歯菌は2〜3歳ぐらいまでに主に両親から子どもに感染し、感染しなかった子どもは虫歯になりにくいことから、子供が生まれる前に両親が虫歯菌の密度を下げておくことが子どもの歯の健康に役立つという説もあります。

キシリトールを一度に10グラム程度以上摂取すると、下痢を引き起こすことがわかっていますが。普通に摂取している範囲では安全性について特に問題はありません。


分子生物学・バイオ技術・環境コラム一覧へ戻る