翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2012/01/10
2型糖尿病について その1

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

日本人に最も多い2型糖尿病のはどのようにして起こるのでしょうか。第1の原因は体内の血糖値(blood sugar level)測定の障害です。私たちの体内では90秒に1回ぐらいの頻度で血糖値が測定されていますが、糖尿病ではこの測定精度が悪くなっています。簡単にいえば、実際の血糖値が200mg/d?に上昇しているときに、120mg/d?と測定されてしまうようなものです。

血糖測定装置から膵臓(pancreas)へ血糖値が伝わると、その血糖値に見合った量のインスリンが分泌されますが、この血糖値の上昇から、インスリンが血液中に出てくるまでの時間が掛かり過ぎるタイプの糖尿病が「2型糖尿病」となり、一般的には糖尿病でない人に比べて、3〜4倍くらいの時間が掛かります。糖尿病の人は甘い物を制限されますが、これがその理由です。砂糖などの甘い物は消化器(digestive organs)からの吸収がよく、血糖値をすばやく上昇させるため、糖尿病の人のゆっくりしたインスリン分泌では間に合いません。理屈からいえば、ご飯をやめて同じカロリーの大福を食べてもよいように思えます。しかし、計算上のカロリーは合っていても、血糖値の上昇とインスリンの分泌にはズレがあるため、吸収されやすい大福では血糖値が急上昇することになります。大部分の人では血糖値の上昇に見合った量か、またはそれ以上の量が分泌されるのですが、なかには適量のインスリンが出ない人がいます。

血管内のブドウ糖はそのままでは何の役にも立たず、血管内から細胞内へと移動して初めてエネルギー源として使われます。細胞内にはブドウ糖を取り込む門のような場所がありますが、ブドウ糖はインスリンと一緒でないとその門から入ることができません。つまり、インスリンは門を開ける鍵のような役割をしているのです。2型糖尿病の患者ではこの門の具合が悪くなっています。インスリン、つまり鍵が門を開けようとしても鍵穴やヒンジに不具合が生じていれば、ブドウ糖はインスリンと一緒でも細胞内へ入れません。

以上の数箇所で調子の悪さが重なると糖尿病を発症しますが、細胞の門の具合が悪いといっても、いろいろなケースがあります。10人の患者がいれば10通りの糖尿病があり、その結果として治療も10通りあります。糖尿病の治療はオーダーメイドで、インスリンを打たなければならない人から食事療法だけですむ人まで幅広いものになっています。


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