翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2011/12/06
DHAとEPAについて

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

「DHA」や「EPA」は健康食品ブームの波にのって有名になりました。前者は「ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid)」、後者は「エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid)」の略で三代栄養素の脂質に含まれている不飽和脂肪酸(unsaturated fatty acid)の一種です。

有名になった理由は、イギリスのクロフォード教授が「DHAは脳の成長に欠かせない栄養素である」と発表したことに端を発しています。DHAは神経突起先端のリン脂質(phospholipid)に多く含まれ、成人の脳で脂質の約10%を占めています。このことから医学界で「頭が良くなる」「老人性痴呆症を予防できる」などのさまざまな効用が言われるようになりました。また、細胞膜や網膜(retina)、心臓、精子、母乳に含まれていることでも話題になりました。

医学界ではEPAを血小板凝集(platelet aggregation)の抑制や、血栓症(thrombosis)関連疾患の予防で有効としています。つまり、動脈硬化(arteriosclerosis)予防の効果があるというわけです。

これらの物質は、青色の背を持つ魚や、それを食する動物に多く含まれていることが明らかにされています。

極寒で生活をするイヌイット(Inuit)は、野菜をほとんど食べることがなく、イワシなどの背の青い魚やアザラシなどの肉を食しています。彼らのエネルギー源はその大半が動物性油脂です。ある統計によると、イヌイットの脂肪摂取量は総摂取カロリーの35〜40%にもおよび、日本人の約1.5倍にもなるそうです。しかも、彼らの血中総コレステロール量は日本人の約2倍にもなるということなのですが、彼らでは心臓をはじめとする循環器系疾患の発生率が非常に低くなっています。私たちの常識から考えると、肉食を中心とした食生活であれば悪玉コレステロールが増加し、動脈硬化などが危惧されるはずです。従って医学界では、彼らの食事にはDHAやEPAが多く含まれるため、これらが悪玉コレステロールを減少させているのではないかと考えています。

日本人も昔は動物性タンパク質を主に魚から摂っており、多くのDHAやEPAを摂取していたことになるため、動脈硬化急増の原因は、牛肉をたくさん摂る食生活にあるのかもしれません。

牛肉などにほとんど含まれていないDHAやEPAを最も効率的に摂取するためには、脂分を逃がさない刺身が一番だそうです。皆さんも今夜の晩酌は、生きのいい刺身で一杯というのはいかがでしょうか。


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