翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2011/11/28
生物を使った二酸化炭素固定

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル:Intergovernmental Panel on Climate Change)の報告書では、2100年に地球の平均気温(mean temperature)が1.4〜5.8℃上昇し、この影響でグリーンランド(Greenland)や南極(the Antarctic Pole)の氷が解け、海面(sea level)は最大88センチ上昇すると警告されています。

地球温暖化(global warming)がもたらす被害はさまざまなものがあります。干ばつ(drought)や豪雨(heavy raiin)の発生による農業生産物への影響、海水面の上昇がもたらす国土の減少、環境変化に対応できない食物は絶滅し、その影響は生態系(ecosystem)を狂わせて動物の生存も危うくすることになります。どれをとっても私たちの生活基盤を揺るがしかねない大きな問題です。

大気中の二酸化炭素(carbon dioxide)やメタン(methane)などは「温室効果ガス(greenhouse gas)」と呼ばれ、赤外線(infrared ray)を吸収することで大気を温める役割を果たしています。この働きが私たちや生物がすみやすい環境を作っているわけですが、その一方で温室効果ガスの濃度が上昇すれば地球の気温を上昇させる弊害を招くことになります。そのため、温暖化を防止するための研究を急ピッチで進める必要があります。

ご存知のようにこの地球上で、二酸化炭素をたくさん吸収しているのは植物です。植物は光エネルギーを使って吸収した二酸化炭素と水から有機物(organic substance)を合成しています。光合成システムを利用して植物の10倍の固定能力をもつフォトバイオリアクター(photobioreactor)を作る研究がありますが、その仕組みは簡単に言えば、集光装置(collection optics)を使って太陽エネルギー(solar energy)を集め、微生物を詰めた「人工葉」で二酸化炭素を固定するというものです。実験によって初期の目標どおり、森林(forest)の単位面積当たり10倍の二酸化炭素を固定する装置がすでに完成しているそうです。

この装置の利点は人工的なエネルギーを使わずに二酸化炭素が固定でき、しかもその過程で生まれる物質を利用して肥料(fertilizer)や燃料(fuel)が作れることです。

しかし、問題点も明らかになっています。1つは集光装置に莫大なコストがかかることです。しかも、大量の二酸化炭素を固定しようとすれば膨大な面積の集光装置を作らなければなりません。2つめは植物の光合成を利用していますから、夜間や雨の日に装置を動かすことができません。

つまり、このような地球温暖化の悪化を防ぐための研究はまだ端緒についたばかりというわけです。


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