翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2011/11/28
微生物や植物に由来する石油

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

ボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)という微生物(microbe)がいます。発見されたのはイギリスの「怪獣伝説」で名高いネス湖(Loch Ness)の近くです。この微生物が注目されているのは、細胞の外に炭化水素(hydrocarbon)を作ることがわかったからです。ボツリオコッカス・ブラウニーを集め、絞ったり、圧力をかけたりすれば石油(petroleum)が取れます。

ボツリオコッカス・ブラウニーは緑藻類(green alga)の一種です。緑藻類は、太陽エネルギーとわずかなリン酸(phosphoric acid)と窒素成分があれば光合成を行い繁殖します。

例えば、組み換えDNA技術(recombinant DNA technology)を使って石油の製造能力を高めたボツリオコッカス・ブラウニーを生み出し、太陽光線の豊富な砂漠のような場所に大きな培養湖を作って大量に繁殖させることが考えられます。増えたところをバキューム装置で吸い上げ、工場で石油と菌体に分離します。石油はエネルギーとして使い、菌体はまた培養湖に戻しリサイクルします。細胞を壊すことなく何度でも炭化水素を抽出できるのが、ボツリオコッカス・ブラウニーの利点です。

このようにすれば、「太陽エネルギーで石油を作り出す」という夢のような話が実現します。現在、石油生産能力の改良が多くの科学者によって進められています。

また植物の中には炭化水素を生成する石油植物と呼ばれるものがあります。例えば、コアラの好きなユーカリ(eucalyptus)の葉の中には数%の炭化水素が含まれており、葉を絞れば石油が取り出せます。他にもアブラギリ(aleurites)、ヒマ(ricinus)、パラゴムノキ(hevea brasiliensis)、グアユール(guayule)などの石油植物が知られています。

中でも有望なのは熱帯(tropics)、亜熱帯(subtropics)に生育するトウダイグサ科(Euphorbiaceae)のアオサンゴです。アオサンゴが分泌する乳液(latex)からは1ヘクタール当たり2キロリットルの炭化水素が取れるといわれています。こうした石油植物の品種改良を行うことで石油の含有量を高めることができれば、相当量の石油を取れることが期待できます。

複数の遺伝形質をもたせた植物をキメラ植物といいます。例えば、塩分に強い遺伝子を品種改良したアオサンゴに移植して、キメラ植物を作り、それを砂漠のような場所に植えれば、緑化と石油製造という一石二鳥の取り組みが可能になります。石油は掘るものではなく、「刈り取る」という時代が本格的にやってくるかもしれません。


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