翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2011/11/21
診断用センサについて

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

昔の医師は患者にどこが痛いのかを聞く問診(interview)や、顔色を見る視診(ocular inspection)、聴診器(stethoscope)による聴診(auscultation)、触診(palpation)などによって病気の診断をしていました。

最近ではエレクトロニクス技術(electronics)の発展により、さまざまな医療診断システムが開発され、客観的データに基づいた科学的な診断が行われるようになっています。これがいわゆる医用工学(メディカル・エンジニアリング:medical engineering)と呼ばれるものです。キーワードは非侵襲(non-invasive)。すなわち、痛みを伴わない診断です。

例えば、脳の研究ではこれまでは脳波測定(electroencephalography)という精度の低い測定法しかありませんでした。それが1980年代以降、さまざまな新兵器が登場するようになっています。放射性同位元素(radioactive isotope)を注射して、脳内の様子を撮影するPET(ポジトロン断層法[陽電子放射断層撮影]:positron emission tomography)や核磁気共鳴(magnetic nuclear resonance)を利用して脳内の状態を画像化するMRI(核磁気共鳴断層撮影:magnetic resonance imaging)、脳の神経細胞が活動するときに発信される微妙な電気信号をとらえるMEG(脳磁図:magnetoencephalography)、近赤外線(near infrared ray)を光ファイバー(optical fiber)で照射して脳内の血液の状態を把握する光トポグラフィ(spectroscopic topography)などがあげられます。こうした新兵器の登場によって、謎の多い脳の機能が徐々に解明されつつあります。

サーモグラフィ(thermography)という診断装置もあります。病気で病んでいる患部は細胞活性が高くなります。細胞活性が高いということは体の表面の温度が高くなるということです。ですから、体の中の熱の高い部分を調べれば、循環器障害などを診断できるというわけです。

ヒトはバイオフォトン(生物フォトン:biophoton)と呼ばれる光を発していますが、この微弱な光を感知して患部を探すフォトンカウンターというセンサも作られています。

MRIによって、人体を「輪切り」にして診断することなど、ほんのひと昔前までは考えられなかった技術です。これまで医療と科学技術は別々に発展してきましたが、これからは細分化された学問がそれぞれの壁を乗り越え、協力して前進することになるでしょう。


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