翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



分子生物学・バイオ技術・環境コラム

分子生物学・バイオ技術・環境コラム一覧へ戻る

2011/11/21
繊毛虫について

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

繊毛虫(ciliata)の仲間は名前の通り、体の表面に細かい毛を生やしています。繊毛虫の中には吸管虫(suctoria)のなかまのように一見繊毛をもたないグループがありますが、吸管虫も子供のうちは繊毛をもっており、立派な繊毛虫です。

繊毛虫のなかまは手足がないためにどれも同じように見えます。しかし、よく観察すると、それぞれ繊毛の生え方や核の形や数、収縮胞(contractile vacuole)の数や位置が異なります。とくに大きな分類基準は口です。繊毛虫を見つけたら、まず口の位置を確認します。口が体の先端にあるのか、あるいは側面にあるのかが最初の分類基準です。ふつう口はへこんでいたり、そこだけ出っ張っていたりします。また、口のまわりには多くの場合、特殊な繊毛が生えており、それを活発に動かしてエサを取ります。口が見えなくても、まわりの粒子の動きを観察することによって、口の位置を推測することができます。さらに、繊毛虫の特徴として遺伝に関係する小核と、代謝に関係する大核を1つ以上もっていることがあげられます。

顕微鏡で観察すると、2匹の繊毛虫が縦に並んでくっついていることがあります。これは分裂といって、1つの細胞が2つに分かれるところです。もし、横に2匹がくっついていたら、これは接合(conjugation)と呼ばれ、お互いに小核の遺伝情報を交換して、若返りをはかっているところです。

繊毛虫の中には藻類(alga)と共生しているものがあります。共生とは一緒に暮らすことによってお互いに利益を得られる関係をさします。多くの場合、クロレラ(chlorella)などの緑藻(green alga)ですが、それ以外の藻類との共生も報告されています。体内に共生藻類をもつことにより、繊毛虫は藻類が光合成によってつくる有機物(organic substance)をもらい、藻類は繊毛虫が排泄するリン(phosphorus)やチッソ(nitrogen)などの栄養分を肥料にしているものと考えられます。エサや肥料分が少ない時期には共生することによって、お互い生きながらえるものと思われます。人間も共生藻類をもつことができたら、ひなたぼっこをしているだけでお腹がいっぱいになれたかもしれません。


分子生物学・バイオ技術・環境コラム一覧へ戻る