翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2011/11/14
食文化を支えるプランクトン

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

滋賀県には、ニゴロブナ(carassius buergeri grandoculis)を使ったフナずしをはじめ淡水魚(freshwater fish)を食材にした伝統的な食品が数多くあります。いわば、滋賀県の食文化を支える柱の1つが淡水魚というわけです。水飴と醤油で煮た佃煮である、アユの飴だきは全国的にも有名です。

この琵琶湖のアユが何を食べているのかを調べるため、アユを数匹解剖して消化管に残っていた食べ物の残りを顕微鏡で観察したところ、ヒゲナガケンミジンコ(calanoida)の卵が見つかったそうです。一般的には、アユは小さいうちはワムシ(rotifera)やミジンコなどの動物プランクトン(zooplankton)を食べ、成長して川で生活するようになると石の表面についている珪藻(bacillariophyta)を食べています。しかし、琵琶湖のアユの場合は、一生ヒゲナガケンミジンコなどの動物プランクトンをエサにしているものが多いというわけです。アユ以外の多くの魚もプランクトンをエサにしています。いわば、食卓の魚は、プランクトンに支えられているわけです。

現在、琵琶湖では外来魚の影響や湖岸のヨシ帯の減少などで、在来魚のホンモロコ(gnathopogon caerulescens)やニゴロブナ(carassius buergeri grandoculis)などが減ってきています。そのため、この現象に歯止めをかける必要があります。

水産試験場では毎年4月の中旬からモロコやニゴロブナの稚魚を増やすために、敷地内のコンクリート槽でワムシやミジンコなどのプランクトンを増殖しています。この水槽に鶏糞などを入れると20日間ほどで水槽の水が緑色になります。その後2〜3日で、緑色が茶色に変わるとワムシが発生してきます。ワムシが多く発生している時期は3〜1週間ほどで、その後ミジンコ類に移ります。この期間、増えたプランクトンを巨大な網で、朝5時から8時頃までに集めて稚魚に与えます。想像以上に大変な作業が行われています。また、どのようなプランクトンがどんな環境で増殖するかはすべてわかっているわけではないので、稚魚がふ化する時期にうまくプランクトンの増加を合わせるには経験に頼るところが多く、今後さらに研究していかなければならない分野とのことです。貴重な水産資源を守るためにプランクトンが利用されている現場を見て、プランクトンに興味をもつ人が増えて、滋賀の食文化が今後も伝えられていってほしいものだと思いました。


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