翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2011/10/17
オスなのにオスに求愛するハエの変異体

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

日常生活ではしばしば嫌われ者扱いされているショウジョウバエ(Drosophilidae)は、研究者からはとても重宝されています。ヒトとショウジョウバエでは、見た目には全く異なるものの、遺伝情報の多くの部分は共有していると考えられています。

ショウジョウバエの突然変異体に、satoriという名の変異体があります。このオスの変異体はメスに興味を持たず交尾もしないことから、悟りの境地に立った修行僧を思わせ、『satori』と名付けられました。しかし後の解析から、satoriはオスでありながら、オスに求愛行動をとるということがわかりました。

では、脳の中のどんな変化がこのような行動を引き起こすのでしょうか。原因遺伝子(causative gene)が働いている細胞を特定することによって、あるタイプの神経細胞集団(neuronal cell population)の細胞の数がオスとメスとで異なっていることがわかりました。この遺伝子はオスでのみ、その神経細胞に対して細胞死を抑制するため、メスに比べてオスの方で神経細胞の数が増えていたのです。

しかし、このような神経細胞数の違いが何故オスへの求愛行動(courtship display)を生み出すのか、ということはまだわかっていないそうです。


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