翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



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2011/02/23
インフルエンザウィルスに対抗する「タミフル」の働き

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

インフルエンザウィルス(influenzavirus)の表面には、ヘマグルチニンというタンパク質とニイラミニダーゼという酵素(enzyme)が存在します。これらのタンパク質の一次構造は、ウィルスによって遺伝子が少しずつ変わるので、少しずつ異なったものになります。つまり、インフルエンザウィルスには、表面にあるタンパク質の構造が少し違ういくつかのタイプがあるわけです。インフルエンザウィルスのタイプは、タンパク質の頭文字であるH(ヘマグルチニン)とN(ノイラミニダーゼ)をとって「N5HI」などと表わします。

ウィルスが増えるプロセスの最後の段階では、感染した細胞(cell)の細胞膜表面から生えている糖鎖末端のシアル酸という糖に、ウィルス粒子表面のヘマグルチニンが結合しています。そして最後に、ノイラミニダーゼがこのシアル酸を切断することで、ウィルスは細胞から離れて自由になり、次の細胞に感染できるようになります。

インフルエンザウィルスに効くと言われている薬剤の「タミフル(tamiflu)」は、ノイラミニダーゼによるシアル酸の切断作用を阻害し、ウィルスが自由になるのを防ぎます。自由にならなければ、次の細胞へ感染できないから、感染が体内で広がらない。もちろん、他人への感染もできない。細胞にくっついたままのウィルスは、やがて細胞とともに死んでしまいます。


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