翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2013/03/21
iPS細胞は世紀の大発明

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

ES細胞(embryonic-stem cell)の利用については可能性や夢が先行し、実用に至らないもどかしさがありました。倫理や拒絶反応も問題ですが、ヒトES細胞の樹立自体が困難であると、さらに勢いがなくなってしまいます。

ところが、2007年の後半にとんでもない朗報が飛び込みました。京都大学と科学技術振興機構の研究チームがマウス体細胞に4つの因子を導入することにより、ES細胞と同じ分化能をもったiPS細胞の樹立に成功したのです。この細胞は受精卵に戻すとマウスの全身の細胞に正常に分化し、親マウスの形質と万能細胞由来の形質が混ざったマウスが生まれたのです。しかも、生殖細胞にも入り込んでおり、そのマウスから全身が万能細胞に由来するマウスが生まれました。

この細胞は患者自身の細胞から作ることができる点で、倫理面でも、拒否反応にも全く問題はありません。この研究発表がなされた後、世界中でこの研究の正しさが証明され、さらに、この研究をもっと先に進めて、ヒトの万能細胞をつくろうとする競争が開始されました。この成果は世紀の大発明と言えます。つい最近では、iPS細胞から作った心筋(myocardium)で不整脈(arrhythmia)の症状を誘導することに成功しています。遺伝子治療や人工皮膚への発展ばかりでなく、人工臓器の作製も夢ではなく、広範囲の医療現場で使われるようになると期待できます。


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