翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2013/03/13
「研究ツール」としてのiPS細胞

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

今回のテーマは、治験などの臨床開発、医薬品、新薬開発における「研究ツール」としてのiPS細胞です。再生医療(regenerative medicine)の主役として脚光を浴びるiPS細胞ですが、臨床に使うにはまだ解決されなければならない問題があります。しかし、臨床で直接治療に用いられる前に、さまざまな研究の場での「ツール」として大きな期待を帯びています。

たとえば新薬の開発です。医薬品の開発にはさまざまな段階があります。新しい化学物質の合成、その候補化合物の能力や毒性を見極めるスクリーニング、実際の患者に対する市販前の治験(clinical trial)といった臨床開発など、現在の医薬品1品目当たり、平均7〜17年の期間がかかるとされています。この開発期間を短縮することで、より早く臨床へ新薬を供給することができるし、コストを削減することも可能になります。

こうした新薬開発の流れの中で最も時間がかかるのはスクリーニングの段階です。どのような効果があるのか、などを一つ一つ確認しなければなりません。あたりまえのことですが、この段階で人間を対象に治療することはできません。病気の原因は個人によってさまざまであるし、遺伝子もそれぞれ少しずつ異なっている部分があります。そのため、ある人で効果のある薬が別の人でも効果があるとは限りません。薬の開発って本当に大変なことなんですね(汗)。

そういうわけで、最近大大大注目のiPS細胞の存在がクローズアップされています。iPS細胞から分化した細胞を用いてクローニングを行えば、患者本人の細胞を用いて薬剤の評価ができるということになります。現在は癌細胞を用いたり、ヒトES細胞を用いたスクリーニングも行われたりしています。しかし、患者本人の個性に合わせた医薬品の開発ができるようになれば、副作用のリスクを大きく下げることができ、より効果の高い薬を選ぶことも可能になります。山中教授に感謝!!!


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