翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2013/01/22
細胞内の翻訳会社と呼ばれるリボソームとバイオインフォマティクス

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

バイオインフォマティクスは英語でbioinformaticsとつづりますが、ワープロによってはスペルチェックに引っかかってしまうような新しい言葉です。バイオインフォマティクスはbiologyとinformaticsをくっつけてできた造語で(中国人の研究者が名付けたとされる)、生命情報学といった類の日本語を意味します。

とはいっても「こういう学問ですよ」という定義は、人によってまだかなりぶれているようで、「私はバイオインフォマティクスをやっている」と宣言した人(こういう人をバイオインフォマティシャン[bioinformatician]という)がやっている学問を指すと思っておいた方がもめなくてよいでしょう。

ヒトゲノムは21世紀初頭にだいたい解読されましたが、ゲノム自体はDNA配列が延々と続いているだけで、それを眺めてもわけのわからない呪文を見ているようであまり意味がありません。

まず、ゲノムの中からタンパク質に翻訳される部分を抜き出す必要があります。DNA内の塩基が3個で1つのアミノ酸をコードしているので、読み始めの位置としては、1番目の塩基、2番目の塩基、3番目の塩基というように3ヶ所を考えることができます。それぞれの始まりからDNAをアミノ酸に翻訳したとき、最も確からしい位置を見つけるのは結構大変な作業で、人間が目で見て実行することは不可能です。

おまけにゲノムはリボソーム(細胞内の翻訳会社)の対象にならない領域だらけで(9割以上はジャンク)、1つのタンパク質を作るのに意味のあるDNA断片をいくつかつなげる必要があったりします。

アミノ酸の位置の特定や組み合わせの計算を必要とするゲノム解析には、のっけからコンピュータが必要だったのです。つまりバイオインフォマティクスの技術なくしては成立しなかったのです。
このほか、タンパク質の配列同士を比較して類縁関係を調べたり、形や機能を予測したりするのにもバイオインフォマティクスが利用されています。


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