翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2013/01/15
CT装置実用化への道のり

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

CT装置は、イギリスのEMI社という企業に勤務していた技術者ハンスフィールド氏によって開発されました。彼自身の話によれば、パターン認識の研究をしていたある日、突然アイデアがひらめいたそうです。

1972年に最初の製品が完成し、発売が開始されました。この年を境に、医学の歴史が大きく変わったといっても過言ではないでしょう。7年後の1979年には早くもノーベル賞授与が決まっていますが、これも発明のインパクトがいかに大きかったかを物語るものです。ちなみに横断面をコンピュータで求めるための理論は、すでにコーマック博士というアメリカの物理学者が一足早く発表していて、2人の共同受賞となりました。

最初の製品は脳だけを対象にしたもので、会社の名前からEMIスキャナーと呼ばれていました。同企業はその後CT事業から撤退しており、この言葉は歴史として使われています。この装置は、X線を発生する部品と検出器が一体になっていて、体の周りを回転しながらデータを収録していくというものでした。長いコードを引きずったまま大きな装置を回転させなければならず、データ収集にも4分ほどの時間を要しました。コンピュータの性能も現在とは比べ物にならず、連立方程式を解くためには、さらに何時間も待たなければなりませんでした。

その後、多数の検出器を1列に並べておき、X線を超音波プローブのように扇状に振らせながら放射するという技術が生まれ、さらにコンピュータの性能もアップして、瞬く間に処理速度と解像度が上がっていきました。今では普及型の装置でも、1枚の横断面を描き出すのに1秒から長くとも数秒しかかからないほどになっています。

難解な技術もその歴史を知ると親しみがわいてくるものです。


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