翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」



分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2011/03/13
サイトゾルで翻訳されるタンパク質

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

サイトゾル内に浮かんだポリリボソームで合成され完成するタンパク質は、シャペロンタンパク質の助けを借りながら高次構造を作ります。たとえば、酸素を運ぶヘモグロビンは、赤血球のサイトゾルに存在するタンパク質ですが、これはグロビンというタンパク質とヘムという低分子化合物が会合したものです。このような会合はタンパク質が翻訳されてすぐ、あるいは翻訳途中で起きると考えられます。また、ヘモグロビンはαタンパク質2つとβタンパク質2つの計4つのタンパク質が会合して、初めて機能あるヘモグロビンになりますが、このような4次構造の形成も翻訳の完了後すぐに起きると考えられます。

翻訳されたタンパク質は、解糖系の酵素や細胞骨格タンパク質のようにサイトゾル内に存在して機能するもの、DNA合成酵素や転写因子のように核内で働くもの、TC回路の酵素のようにミトコンドリア内部に運ばれて働くもの、植物では葉緑体で働くもの、ある種の酸化酵素のようにペルオキシソーム内で働くものなど、いろいろあります。

オルガネラに分布するタンパク質には、行き先を決める荷札が付いています。タンパク質の一次構造の中に、「核内行き」「ミトコンドリア内行き」「ペルオキシソーム行き」など、各々の行き先を示す、シグナル配列という一定のアミノ酸配列からなる荷札が付いているんです。この荷札を識別して結合する受容体タンパク質があり、これによって各々のオルガネラへの輸送が完了するんです。アミノ酸配列の荷札はタンパク質の一次構造の一部であって、それは遺伝子DNAの塩基配列によって規定されている。つまり、タンパク質の行き先も、遺伝子が決めているわけです。

サイトゾルで働くタンパク質には、特別の荷札はないようです。でき上がったタンパク質はサイトゾルへ遊離して、そこで働く。解糖系酵素、脂肪酸合成酵素、核酸代謝酵素など多くの酵素のほか、シグナル伝達経路の酵素、細胞骨格タンパク質など、実にたくさんのタンパク質があって、そこで働きます。


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