翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」

高橋翻訳事務所

分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2011/02/23
ジュラシックパークの可能性について

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

S.スピルバーグ監督の「ジュラシックパーク(英語:Jurassic Park)」という映画を観た方は多いと思います。恐竜の血を吸った中生代の蚊が、琥珀に閉じ込められていたという話から始まります。この蚊から恐竜の血球を取り出し、血球からDNAを取り出します。どうしても足りない部分には爬虫類のDNAを利用した、というところは話に真実味を与えています。そして、このDNAを両棲類の卵細胞に導入し、恐竜を発生させています。

このようなことは現時点では不可能ですが、生物学(biology)の観点からは原理的に可能となるでしょうか?

生命(life)の設計図は遺伝子(gene)であり、遺伝子を物質と見たものがDNAです。たった一つの体細胞でも、一つの固体を作り上げるために必要なすべての遺伝子を持っています。そのため、一つの血球から恐竜という固体を作り上げるということは、概略的には間違っていません。

しかし、問題になることは、遺伝子は設計図にすぎないということです。設計図に基づいてものを作るためには、それを実行する機械や設備、工場が必要となります。卵細胞(egg cell)がこれらの役割を担っています。そのため、借り物である卵細胞を用いて、遺伝子の働きを正しく調節できるかどうかについては疑問が残ります。


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