消費税引上げと軽減税率について



契約書・政治経済・アート・スポーツコラム

契約書・政治経済・アート・スポーツコラム一覧へ戻る

2019/07/31
消費税引上げと軽減税率について

高橋翻訳事務所で政治経済の翻訳を担当している佐々木と申します。今回は消費税の引上げ(consumption tax hike)と軽減税率(reduced tax rate)について取り上げていきます。

2019年10月に消費税が10%に引き上げられることを受け、さまざまな準備が進められていますが、景気への影響を最小限に抑えるために、軽減税率制度が導入される予定となっています。政府広報オンラインによると、軽減税率制度は、「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」が対象で、税率は8%に据え置きとなります(軽減税率)。「酒類・外食を除く飲料食品」について具体的に見ていくと、テイクアウトや宅配、有料高齢者施設での飲食料品の提供、学校給食は対象ですが、外食やケータリング、出張料理は対象外のため標準税率(10%)となります。外食の定義としては、「飲食設備(テーブル、イス、カウンターなど)のある場所において、顧客に飲食させるサービス」とされていますが、今回の軽減税率ではテイクアウトと外食の線引きとして、例えばファストフード店での店内飲食は「外食」になるため10%が適用されますが、テイクアウトの場合は8%となります。また、コンビニエンスストアで弁当を購入し、店内のイートインスペースで食べる場合は10%、持ち帰る場合は8%が適用されます。同様に、ショッピングモール内のフードコートでも、フードコート内の飲食スペースで食べる場合は10%、持ち帰る場合は8%となります。ここで問題となるのは、購入時にレジで「テイクアウト」と伝えても、実際には飲食スペースで食べるケースですが、国税庁(National Tax Agency)が発表しているQ&Aによると「販売時点」での対応を基本にするとのことです。そのため、実際にはイートインスペースで飲食する予定でもレジで「テイクアウト」と伝える消費者が増えるのではないかという懸念があります。また、寿司のチェーン店などで、店内で食事をした後に食べきれないものを持ち帰る場合は10%ですが、初めから持ち帰り用に注文したものは8%となります。このような場合、会計時に2種類の消費税処理が必要となるためレジでの対応が煩雑になり、混乱が生じることも予想されています。

海外の消費税(付加価値税:VAT(Value Added Tax))や軽減税率はどのような構造になっているのでしょうか。まずは、1968年に付加価値税を導入したフランスを見てみますと、標準税率は20%です。軽減税率は、食用を除く農水産品、住居の改築工事、レストランなどの一部サービスが10%、食品、書籍、身体障害者用の機器などが5.5%、一部の医薬品などが2.1%となっています。フランス独特の特徴はチョコレートです。ブラックチョコレートは家庭での製菓材料として使用されるため生活必需品とみなされ、5.5%の軽減税率が適用されますが、ミルクチョコレートやホワイトチョコレートは贅沢品のため20%となります。また、世界三大珍味であるフォアグラ、トリュフは5.5%ですが、キャビアは20%が適用されます。理由としては、キャビアは輸入が多く、フォアグラとトリュフはフランス国内での生産が多いため、国内のフォアグラやトリュフ産業を保護するためにこのような税率を採用しています。

EU離脱(Brexit)で揺れているイギリスでは、付加価値税の税率が3つに分類されています。標準税率は20%で、電力や家庭用燃料などが軽減税率5%、食料品や書籍など、日常生活に必要だと考えられる品目はゼロ税率(0%)となっています。アフタヌーンティーの文化が根付いているイギリスでは、ケーキ類やビスケットは日常的な食べ物としてゼロ税率が適用されますが、チョコレートやアイスクリームは贅沢品として20%が適用されます。イギリスでは、付加価値税をめぐり、ポテトチップスメーカーが自社のポテトチップスに使用されているじゃがいもは原料の42%のため、ビスケットのゼロ税率が適用されると主張した裁判は有名な話です。高等裁判所ではメーカー側の主張が認められましたが、控訴審では税率を逃れるための故意的な主張であるとの判決が下り、ポテトチップスと同率の税が課せられることになりました。

その他、特徴的な軽減税率を採用しているのはカナダです。食料品は基本的に非課税で外食は課税対象ですが、ドーナツについては5個以内であれば課税、6個以上は非課税となっています。5個以内はその場で食べられる個数、6個以上は持ち帰りとみなし、このような線引きが設けられました。

ヨーロッパで付加価値税の議論が始まった際には軽減税率という概念はありませんでしたが、各国が付加価値税の導入を進める中で反対意見への妥協案として生活必需品などの税率を据え置くようになったのが、軽減税率導入の背景にあります。現在、軽減税率制度の複雑さや煩雑さを問題視し、導入が失敗だったと指摘する専門家もいますが、日本で導入される軽減税率がどのように受け入れられ、浸透していくのか、注目が集まっています。


契約書・政治経済・アート・スポーツコラム一覧へ戻る


ご利用の際は、必ずご利用上の注意・免責事項をお読みください。