翻訳家によるコラム「契約書・政治経済・アート・スポーツコラム」



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2016/09/14
契約書の前文は独特のフォーマットですが、慣れれば難しくありません

こんにちは。高橋翻訳事務所(http://goo.gl/25cZv)契約書・法律文書翻訳担当の佐々木と申します。今回は契約書の前文について取り上げていきます。

日本語の「契約」を意味する英単語には、「contract」と「agreement」が主に使用されていますが、違いはなんでしょうか。まず、contractは2人以上の当事者間で合意され、そしてその合意が法律によって強制されるものと定義されています。また、英米法では、合意だけでなく、約因(consideration)が含まれないと、contractとしては成立しません。約因とは、当事者間に存在しなければならない取引上の損失を指します。例えば、あるお店がパソコンを販売する場合、お店はパソコンを引き渡すという損失があり、お客さんは代金を支払うという損失が発生します。このように、厳密に言えばcontractとagreementは異なる意味を持っていますが、現在では同じ言葉として使用されるケースがほとんどですので、気にする必要はありません。では、委託販売契約の前文を見てみましょう。

CONSIGNMENT AGREEMENT
This Agreement, made and entered into this _____ day of _____, 20__ __, by and between _____ K.K., a corporation duly organized and existing under the laws of Japan with its registered principal place of business at ______, Japan (hereinafter called “Consignor”) and _____, a corporation duly organized and existing under the laws of _____ with its registered principal place of business at _____, _____ (hereinafter called “Consignee”).
WITNESSETH:
WHEREAS, Consignor is desirous of selling and exporting “Products” as hereinafter defined, to “Territory”, as hereinafter defined, on a consignment basis, and
WHEREAS, Consignee is desirous of acting as consignee for sales of Products in Territory.
NOW, THEREFORE, the parties hereto hereby agree as follows:

委託販売契約
本契約は、 20_____年_____月_____日、日本国_____に登録された主たる営業所を有し、日本国法に基づいて適法に設立され、存続している会社である_____(以下、「委託者」という。)と、_____に登録された主たる営業所を有し、_____国法に基づいて適法に設立され、存続している会社である_____(以下、「受託者」という。)との間で締結された。

委託者は、本件製品(以下に定義される。)の本件販売地域(以下に定義される。)への委託販売ベースでの販売及び輸出を望んでおり、受託者は、本件販売地域において、本件製品の販売のための受託者として活動することを望んでいる。
ゆえに、本契約の両当事者は、以下のとおり合意する。
(出典:日本商事仲裁協会)

ここで、「witnesseth」という見慣れない単語が出てきましたが、「〜を証する」という意味で、「witness」の三人称、単数、現在の古い形です。フォーマルな英文契約書では依然として上記のようなフォーマットが使われていますが、最近はwitnessethを用いない契約書も増えています。例えば、

This Agreement is made and entered into this _____ day of _____, _____, by and between _____, a corporation organized and existing under the laws of _____, having its principal place of business at _____ (“Seller”), and _____, a corporation organized and existing under the laws of Japan, having its principal place of business at _____, Japan (“Buyer”).
Recitals:
WHEREAS, Seller has developed and manufactures the Products (hereinafter defined); and
WHEREAS, Buyer desires to purchase such Products from Seller for parts of the _____ manufactured and sold by Buyer (“Machinery”), and Seller desires to sell the same to Buyer.
NOW THEREFORE, in consideration of the terms and conditions set forth herein, the parties hereby agree as follows:

本契約は、_____年_____月_____日に、_____国法に基づき設立され存続する会社であって、その主たる事務所を_____に有する_____(以下「売主」という。)と、日本国法に基づき設立され存続する会社であって、その主たる事務所を日本国_____に有する_____(以下「買主」という。)との間に締結され、以下のことを証する。
前文
売主は、以下に定義される対象製品を開発し、製造している。
買主は、買主が製造し販売する_____(以下「対象機械」という。)の部品として使用するため、対象製品を売主より購入することを希望しており、売主は、対象製品を買主に販売することを希望している。
よって、本契約に定める条件を約因とし、両当事者は以下のとおり合意する。
(出典:日本商事仲裁協会)

2つ目の例文では、witnessethではなく、代わりに「recitals」が使われています。通常、recitalsには、契約締結の背景や目的、経緯などの中でも特に重要と思われる事項が記載されています。上記の前文を一つひとつ見てみますと、

(1)売主は、以下に定義される対象製品を開発し、製造している。
→契約の当事者がどのような事業を手掛けているかなど、背景を説明しています。
(2)買主は、買主が製造し販売する_____(以下「対象機械」という。)の部品として使用するため、対象製品を売主より購入することを希望しており、売主は、対象製品を買主に販売することを希望している。
→(2)では、契約の目的について簡潔に述べています。
(3)よって、本契約に定める条件を約因とし、両当事者は以下のとおり合意する。
→そして、契約を締結する旨が明記されます。

上記の例文に「whereas」という単語が出てきましたが、これも古い契約書の名残です。特に和訳する必要はありませんが、条項を指します。Whereasとセットで使われるのが、「now, therefore」です。こちらは例文のとおり、「よって」と和訳します。また、Recitalsの変わりに「preamble」を用いている契約書も多く見られますが、意味はrecitalsと同じです。このように、英文契約書の前文には古い英語の様式や単語が出てきますが、フォーマットはほぼ決まっており、さらに現在の契約書は「agreement」のみの表記であったり、前文を表す言葉を使用しないなど、簡素化の傾向にありますので、慣れてしまえば難しくありません。


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