翻訳家によるコラム「デング熱、北米上陸!」

高橋翻訳事務所

環境コラム

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2011/07/01
デング熱、北米上陸!

環境翻訳担当のYMです。

DCではここところ連日30℃を超える夏日が続き、先日は39℃まで上がって高齢者や乳幼児への外出禁止令まで出ました。

この蒸し暑さに喜んでいるのは蚊。夏だから仕方ない、とこれまであまり深く考えたこともなかったのですが、先日デング熱(Dengue Fever)がアメリカ国内でじわじわ勢力を強めていると聞いて愕然としました。ほんの数年前まで、デング熱といえば熱帯地方(tropical region)の風土病(endemic disease)というイメージでしたが、昨年はフロリダからテキサス、ハワイまで、アメリカの熱帯地域全体で患者が確認されたそうです。

デング熱はデングウイルス(Dengue virus)という病原菌(pathogen)によって引き起こされ、数種(species)の蚊を媒介(transmit)して人間に感染(infect)します。アメリカ大陸ではAedes aegyptiと呼ばれる蚊がデングウイルスを運ぶことがわかっています。人の生活環境(living environment)にもっとも適応した(adaptive)種とされ、屋内の僅かな水でも繁殖(breed)するため、駆除(control)は非常に困難です。ウイルスには4つの型があり、1つの型に感染すれば抗体によってその型について免疫(immunity)ができます。しかし、別の型に続いて感染した場合、最初の抗体(antibody)が次の感染を助け、ときには命にかかわる合併症(complications)を引き起こすことがわかってきています。感染を防ぐには同時に4つの型に有効なワクチン(vaccine)を開発する必要があり、残念ながらそのようなワクチンはまだ存在していません。

このデング熱、筆者も南米コロンビアでかかりました。激しい悪寒(chill)と高熱(high fever)、湿疹(rash)、筋肉や間接の痛み(muscle and joint pains)が何日も続く何とも不愉快な病気ですが、最終的に何が効いたかというと、現地のインディオ(Indios)が昔から使っている薬草(medicinal herbs)、マタ・ラトン(Mata Raton; Gliricidia sepium)でした。この薬草をシャワーでまんべんなく体に刷り込み、さらに布団に敷いてその上に寝て、とどめに煎汁を飲みます。最初はおまじない程度に思って試してみましたが、これが驚くほど効きました。後になって調べてみたところ、抗ウイルス性(antiviral)、抗菌性(antibacterial)に優れた薬草、また殺虫剤(pesticide)として幅広く用いられている植物であることがわかりました。

やはり太古の昔から、様々な土地の病気と共存してきたインディオの知恵は素晴らしいですね。市場の薬草売りに症状を伝えると、うず高く積んである乾燥植物の数々からだまって手際よく薬草を「処方」してくれます。コロンビアに限らず南米に行かれる方は、ぜひインディオの薬草をお試しあれ。


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