翻訳家によるコラム「ハイチの大地震について−その2」

高橋翻訳事務所

環境コラム

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2010/08/16
ハイチの大地震について−その2

環境翻訳担当のYMです。

今回もまたハイチについての話題です。少し前になりますが、 5 月に放映された NHK クローズアップ現代「ハイチのマザーテレサ 83 歳日本人女医の挑戦」を記憶されている方も多いのではないでしょうか。 1970 年代から一貫してハイチにおいて医療支援を行なってきたシスター須藤、須藤昭子さんに関する番組でしたが、その中で須藤さんは、ハイチ市民の自立には植林( reforestation )など農村地域の開発( rural development )が必要だと述べています。

もともと結核・エイズ患者の治療に尽力されてきた須藤さんが自らの手で農学校を設立しようとの思いに至った事実に、人間生活と自然環境とのバランスの大切さを読み取ることができるのではないでしょうか。食べさせなければ病気は治らない、しかし食物を作る畑は森林伐採( deforestation )による洪水の被害を受け生産もままならない、そのためにまず植林をすすめなければいけない−そこから、須藤さんの農業教育と実践が始まったといいます。現在須藤さんの指導のもと、ハイチにおいて永続的発展を目指す環境団体ジェッド( Groupe Ecologique pour le Developement Durable en Haiti: GEDDH )は、植林指導を行ないながら炭焼きの技術も伝え、木酢を用いて作物を育てるなど持続可能な( sustainable )農村づくりに力を注いでいるそうです。

炭といえば、燃料不足のハイチではバイオ燃料( biomass fuel )が注目を浴びています。地震発生前、都市部では石炭および木炭が、また地方では薪が主な燃料として用いられていたと言われており、廃棄物( wastes )をペレット状に加工したものが代替燃料( alternative fuel )として期待されているようです。ここで廃棄物とは、回収された紙類( recycled paper )に加え、ヤシ殻、マンゴーの種、柑橘類の皮、トウモロコシの芯などを指します。ジェッドでもこうした廃棄物を炭化し炭団( charcoal briquettes )として用いる技術の普及に取り組んでいるそうです。

多額の復興資金があっても、自然と人間とのバランスを取り戻さなければ真の復興はあり得ない、そんなメッセージが聞こえてくるようです。

参照:
http://www.fesco.or.jp/winner_h21_241.html
http://stoves.bioenergylists.org/en/content/fuel-options-post-ea


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