医学翻訳、薬事申請翻訳、看護翻訳、介護翻訳、医療翻訳担当のY.O.です。
「食料自給率」という言葉を良く耳にします。
では、医療機器の自給率( self-sufficiency ratio )についてはどうでしょうか。
平成 20 年薬事工業生産動態統計年報の概要によると、
医療機器輸出金額: 559,160 (百万円)
医療機器輸入金額: 1,090,749 (百万円)
となっています。
身近な例として、携帯電話が普及してから耳にすることが多い「ペースメーカ( pacemaker )」を見てみましょう。(株)アール アンド ディー「医療機器・用品年鑑」 2005 に基づく資料によると、 2004 年時点でペースメーカの輸入割合は 100 %(数量ベース)だったそうです。循環器系の製品は全体的に輸入の割合が大きい傾向があります。
MRI による検査を受けたことがある方も多いかと思いますが、 MRI については 2004 年時点で、国内製造 59 %、輸入製品 41 %(金額ベース)となっているようです。
アイスランドでの火山噴火により、世界中で多くの飛行機が欠航し、欧州からの物資の移送に大きな支障が生じて問題となったことはまだ記憶に新しいと思います。その際、日本国内での輸入医療機器( imported medical device )の在庫( stock )が心配でした。一品目の医療機器でも、患者さんの生物学的特性や病状に対応できるよう、さまざまなサイズ(直径・長さ)、材料、コーティング、電気エネルギーの出力などがあるため、仮に数量的にたくさんの在庫があったとしても、治療対象の患者さんに必要なサイズ、材料、コーティング、電気エネルギーの出力などの仕様をすべて満たす当該医療機器の在庫がないというケースも考えられます。通常であれば、国内でも患者数に基づいて想定した必要数の在庫は管理されていると思いますが、今回のように欧州からの物資の移送が長期的に妨げられた場合、在庫は大丈夫なのだろうかと少々不安を覚えます。今回の件で、日本が医療機器の多くを輸入に頼っているのであれば、このような事態を想定しての在庫確保や、通常とは異なるルートでの緊急輸入手段の確立などの措置を講じる必要性を感じます。
普段はあまり気に留めないでいる点ですが、今回のような天災による流通の障害などを見ると、食料自給率のみならず、医療機器自給率についても再検討が必要な時期にきているように思えてなりません。
参照:
http://www.mhlw.go.jp/topics/yakuji/2008/nenpo/index.html
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/05.december/05122703hontai.pdf
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