翻訳家によるコラム「医学・薬事申請コラム」

高橋翻訳事務所

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2011/06/24
「顎関節症」について

医学翻訳、薬事申請翻訳、看護翻訳、介護翻訳、医療翻訳担当のY.O.です。

一時期ほどメディアで取り上げられることは少なくなったように思われる「顎関節症(temporomandibular disorders / temporomandibular dysfunction syndrome)」ですが、経験のある方は多いのではないでしょうか?二人に一人が一生のうちに一度は経験するとも言われているそうです。

私自身、数年前から開口障害や開閉時のクリック音など顎関節症の症状があり、歯科でレントゲン撮影、触診、顎関節運動の検査などを受け、就寝時にスプリント(splint)(マウスピースのようなもの)を着用しています。しばらく落ち着いていたのですが、ここ数週間で3回、関節円板(articular disk)の前方転位(antelocation)がありました。2回目までは歯科で徒手的円板整位術を受けて戻してもらいましたが、2回目の施術の翌日にまた転位があり、もっと根本的な検査や治療が必要なのでは・・・と不安になり、顎関節症について少し調べてみることにしました。

特別に開発した機器やソフトを使って顎関節の動きなどの詳細な検査を行っているという矯正歯科を見つけ、保険適用の可否や費用を問い合わせたところ、すべて保険適用対象外となっており、まず初診料3150円を支払って診察を受け、治療を始めるという話になった場合は検査料で約10万円先払いという料金設定でした。治療費については個々の症状などによって変わります。確実に効果があるかどうかわからない治療に賭けるには高額なため、これは諦めることにしました。

次に、できるだけ最近発行された本で情報を得ようと思い、2011年発行の東京医科歯科大学の先生が書かれた本を読んでみました。
この本によると、顎関節症は「自己限定性疾患(Self-limited disease)」で、特別な治療をしなくても時間の経過に伴って改善していく場合が多い病気だそうです。
以前は「かみ合わせ」が顎関節症の原因とされ、かみ合わせ調整のため歯を削ったりする非可逆的な治療が行われることが多かったのですが、最近ではまずは可逆的な治療を試みるのが主流になっているようです。
病因は一つに限定できるものではなく、複数の「寄与因子」が関係していると考えられています。例えば、関節や歯などの構造上の問題、歯ぎしりやくいしばりなどの行動の要因、性格や精神的緊張などの精神的な要因、同じ姿勢での長時間のPC作業などの環境的な要因があります。

さまざまな要因の中で、この本で一番大きく取り上げていて興味深いのが、「不用意な上下の歯の接触という癖(Tooth Contacting Habit=TCH)」です。これは、歯ぎしりやくいしばり(grinding / gnashing of teeth)のように強く歯を噛みしめるものではありませんが、歯が接触している間は口を閉じる筋肉が活動を続けるため、筋肉の疲労や顎関節の負担につながります。著者によると、このTCHという自分にとって「不利な行動をとっているという認知」をし、それを止めるための「具体的な変容行動」を実施し、その変容行動を「強化」することによって改善できるそうです。

就寝時に歯ぎしりをしていることや翻訳作業や編物などに集中している時に歯を強くくいしばっていることに関しては自分でも相当自覚があり、就寝時にマウスピースを着用したり、意識してくいしばりを避けるように注意したりしていましたが、TCHについては自覚がなかったばかりではなく、それが筋肉や顎関節に負担をかけるとは考えてもいませんでした。むしろ、上下の歯が常に接触しているのが通常の状態だと思っていました。

専門医をたずねて適切な治療を受けることはもちろんのことですが、日々の生活の中で自身でできることは実践していくという「セルフケア」の重要性を改めて認識しました。
英語の書籍などにも範囲を広げて、引き続き顎関節症に関する情報を集めて勉強していきたいと考えており、新しい情報が得られたらまたコラムでご紹介したいと思います。

顎関節症  顎関節症

参考文献

木野孔司(2011)『完全図解 顎関節症とかみ合わせの悩みが解決する本』講談社


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