翻訳家によるコラム「医学・薬事申請コラム」

高橋翻訳事務所

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2011/01/31
「ひきこもり」の支援について

医学翻訳、薬事申請翻訳、看護翻訳、介護翻訳、医療翻訳担当のY.O.です。

「ひきこもり」という言葉の定義自体が曖昧で、心身の疾患で外出できないため仕事に就けず結果的に家でほとんどの時間を過ごしている人、働こうと思えば働くことができるけれど「生活保護(public assistance、welfare benefitsなど)を受けている方が自分で働くより楽な暮らしができるから」「働かなくても家族が養ってくれるので問題ないから」と考えている人、働きたいという意思があるものの仕事を見つけることができずに結果的に家にいる人、とさまざまな人がひとくくりにされているような印象を受けます。そのためか、多くの人々、特に厳しい労働条件で働きながらも低所得に悩む人々の「ひきこもり」に対する意見は否定的で厳しいものが多いようです。

複数の要因が複雑に絡み合っており、一人一人の状況は異なるため、解決策も多岐にわたると思いますが、例えば、以下のようなことが考えられると思います。

@一人一人が、さまざまな経歴(background)、心身の状態の人を差別することなく、同じ社会の一員として受け容れる(accept)努力をすること。
解雇などにより職を失った後、なかなか再就職できずにブランクがあったり、心身の疾患などで働くことができなかった期間があったりした人に対する偏見をなくさなければ、このような経歴のある人たちが社会に復帰してくることは難しいでしょう。
また、心身の疾患そのものに対する偏見は全般的に強く、疾患にかかったことがその人自身の責任であるかのように非難を受けたり、疾患の経歴や現在残っている症状のことで冷やかされたりすることも多く、疾患の苦しみを乗り越えて、一旦症状が軽快や寛解した後も再びあのつらい症状に襲われるかもしれないという不安を抱えつつ社会復帰を目指す人々にとって、これは言った側の思っている以上に大きな障害となります。本人はもちろん、家族への風当たりも強いようで、疾患のある家族を必死に隠そうとして、また、守ろうとして、結果的にさらにひきこもらせてしまうことも少なくありません。
自分が経験していないことを理解するのは私たちには非常に難しいことですが、相手のことを理解しようという思いやり(humanity)や想像力(imaginative power)によって、少しでも近付いていけるのではないでしょうか。

A企業(雇用者)が、さまざまな経歴、心身の状態の人がそれぞれの状態に応じて働ける環境を整備すること。これには、雇用者側の大きな負担を伴うため、政府の支援も必要です。
雇用者としては、できれば完全に健康で社会性があり経験も豊かで、フルタイムでばりばり働ける人を雇用したいと考えていると思います。このような条件を満たしていながら苦しい就職活動を続けている人々がたくさんいることを思えば、健康状態に問題があって労働条件に調整が必要な人、働いた経験があまりない人、他人とのコミュニケーションを困難に感じる人の雇用機会が少ないことは容易に想像できます。政府の支援などを受けて、さまざまな背景や状況の人がそれぞれに応じた働き方をできるようなシステムを推進していくことが重要だと思います。

素人なりにこのようなことを考えていますが、専門家の方々などはより現実的かつ具体的な解決策を考えていることでしょう。批判をするのではなく、社会、雇用者、一人一人が何をしていけるのかについて、一緒に考え、それを実行していくことが解決の第一歩だと思います。


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