翻訳家によるコラム「“entity”」



法律・契約書コラム

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2011/05/09
“entity”

契約書翻訳、法律文書翻訳担当の岡田です。

今回は"entity"について説明します。

"entity"は、契約書などの法律文書ではよく用いられる単語ですが、"entity"を一般的な辞書でひくと、「存在」「存在物」「実在」「実在物」「自主(独立)的なもの」、「統一体」などと記載されています。しかし少なくとも契約書などの法律文書の翻訳では、こうした訳語が用いられることはなく、「法主体」と訳されることが多いと思います。「法主体」とは、自然人(要するに人間です)以外で、「訴訟当事者となりうる者」や「権利義務の帰属主体となりうる者」や「税法上の課税対象となりうる者」などを意味するのですが、一般的に聞きなれない言葉であり、場合によっては文書の内容や用途などに応じて他の言葉に置き換える必要があります。

「英英辞典」などをみると"entity"は次のように定義されています。

“an organization (as a business or governmental unit) that has an identity separate from those of its members”(その構成員とは別個の独自性を備えた組織(事業体や政府機関など))

“a general term for any institution, company, corporation, partnership, government agency, university or any other organization which is distinguished from individuals.”(個人とは区別される、協会、会社、法人、パートナーシップ、政府機関、大学またはその他の組織の総称)

また、上記の定義を反映するものとして、日本の法律を英訳した資料を見ると以下のように「者(もの)」の訳語として"entity"が用いられています。

「この法律において「特定法人」とは、次の各号のいずれかに該当するものをいう。」
“The term "specified corporation" in this Act shall mean an entity that meets any of the following conditions:

「保険会社その他の政令で定める者」
“insurance company or other entity specified by a cabinet order”

このように” entity”の意味の範囲は非常に広く非限定的なので、文脈に応じて「組織」、「団体」、「機関」、「機構」、「会社」、「企業」、「企業体」、「事業」、「事業体」、「者」、「もの」などと訳すことが必要です。

余談になりますが、こうしてみると「組織」や「団体」などの一般的な訳語が辞書にないのは不思議だと思います。


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